113.独占 ページ13
*
「Aとちゃんとキスできるのって俺しかいないでしょ？」
「そうなんだよね……なんでだろう……玲於くんって王子様？」
「いや……(笑)」
真剣な顔してそう言うもんだから思わず笑ってしまう。
「潔癖ってわけでもないし……でも玲於くんとするまでは嫌いだったの。なんか気持ちよくなくて」
「俺は別に嫌いじゃなかったけど、この子とキスしたい、しなきゃいけないって初めて会った時から思ってた」
「今は？」
「今？多分Aと思ってること同じだよ」
「ふふ、ずっとわたしの唇目当てだと思ってたから、好きって言ってもらえて嬉しかったんだ」
最初、キスしたいだけだったのは事実だし
キスできてからもどうしていいか迷ってたっけ。
「俺が行かなきゃ会ってくんなかったもんね」
「あー……頃合いを見て会うつもりだったよ？身体だけの関係で我慢するつもりだったし」
「Aのことだから悩んで倒れてたよ、きっと」
「へへ、そうかも(笑)玲於くんのこと、独り占めしたくてたまらなかったから」
「……独り占めできてよかったじゃん」
「うん……」
恥ずかしそうに手を重ねてくるAにそっと口づけた。
今は俺の方が、独り占めしたい気持ち強い気がする。
俺だけ見ててほしいし、どこにも行ってほしくない。
無意識に引き止めてしまうくらいには。
「じゃあ……またね。お邪魔しました」
「ん、気を付けて」
Aは夜ご飯を一緒に食べずに帰っていった。
出ていく時にしたキスの感触がしばらく残っていて
ひとりでいるのが寂しく感じた。
.
『お父さんが席用意してくれるって言うんだけど……玲於くん興味ある？急だし予定あるだろうから無理しなくていいんだけど』
野球の試合観に行かない？
数日後、Aからそんな内容の電話がかかってくる。
『融通は利くから、他の人連れてきても大丈夫だし』
「確認したらその日大丈夫そうだけど、メンさん連れてっていい？」
『もちろん！お父さんに言っとくね。詳細また連絡する』
メンさんいれば怪しまれないだろうし、
退屈もしないだろう。
Aは一緒に観るんだろうか？聞くの忘れた。
いないなんてことはないだろうけど。
メンさんを誘うと二つ返事で行くと言った。
「うわ、その日優勝争いのカードじゃん！普通に楽しみなんだけど。田鍋遥のホームラン見れないかなー」
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作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年10月17日 7時
