とあるCAMPの裏側ー10 ページ35
「ヴィル、もうそれくらいにした方が…ホントにクシナの頭蓋骨が砕けるぞ」
そうそう、トレイ先輩の言う通りそろそろ解放してください！
「あら、身嗜みもきちんとできない子ジャガはいっそ砕いていまった方がいいんじゃないかしら」
ダメ、それ絶対ダメ!!
未だに力を緩めないヴィル先輩にそろそろ自分の頭蓋骨が本気で危ないのでは、と危機感を抱いた時だ。
「おやおやヴィル、静かに怒りを見せる君も大変美しい。実にトレビアンだ！」
こ、この声はもしや…
「だがそのくらいにしておかないと、蝶の君の愛らしい頭部が歪んだままになってしまうよ」
待ってましたと言わんばかりに現れた救世主、ルーク先輩。
というか何処から現れたんだ。全く気配がなかったんだが。
「そんなに気に入らないのなら、私が彼の髪をアレンジしてあげるが。どうだろうか？」
そう言ってどこから取り出したのか、先輩はヘアブラシとヘアゴムをヴィル先輩に見せてきた。
「…分かったわよ。その代わり、アタシ好みの髪型にしなさいよ」
「ウィ、勿論だとも！」
ようやく納得してくれたのか、先輩の手から解放される私の頭。ホントに変形してないだろうな。
食い込んだ部分がまだジンジンと痛む中、頭部にふわりと両の指先が添えられる。
「さて、失礼するよ蝶の君」
「は、はい…」
一度声を掛けてからルーク先輩は丁寧にヘアブラシで私の髪を解いていく。
「それにしても珍しいね。2人がこの時間帯に食堂へ来るなんて」
スマホに視線を送りつつもヴィル先輩に問いかけるケイト先輩。
「ついさっきまで映画研究会の打ち合わせがあってね。今は休憩時間ってとこよ」
ケイト先輩の隣へ座りながら先輩は横の髪をかき上げた。うん、そんな動作だけでも綺麗だなこの人は。
「へぇー今度はどんな映画を作るの？」
「いちよアクションをメインにするつもりだったのよ」
「でも…」と言葉を濁すヴィル先輩にケイト先輩は首を傾げる。
「でも？」
「…いないのよ」
「いないって何が？」
トレイ先輩がきょとんとして聞き返すと、ヴィル先輩は勢いよく机を叩く。
「スタントマンが！」
「スタント…」
「マン？」
スタントマンとはアクションやカーチェイスなど危険なシーンなどを俳優に代わって担当する人のこと。
「本当だったらこの3連休で撮影を済ませるはずだったのに。よりにもよってその担当する子たちが全員不在なのよ！」
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作者名：フウカ | 作者ホームページ：http naru1
作成日時：2021年7月12日 20時
