続とあるオタモブの憂鬱ー11 ページ12
「えっと…」
クシナは戸惑ったように少し考えてから、答えた。
「ほっとけなかったから、もありますけど何となく似てたからですかね」
「は?」
似てた?何にだ。
「なんで付け回していたのか理由は聞きませんが、もう少し慎重に行動してくださいね」
クシナの瞳が某の意図を探るように細められる。なんだかその姿が妖艶にも見えてきた。
「それじゃあ、私はこれで」
ぺこりと丁寧なお辞儀をしつつ、クシナは何事もなかったかのような素振りを見せたまま某の前を去って行く。
正直、クシナの言っている意味があまり理解できていない。というか、クシナが助けに入った展開から付いて行けないでいた。
漫画のヒーローのように颯爽と登場し、不良を撃退。ヒロインのお礼の言葉を素直に受け取らないまま華麗に去って行くこの展開。
あれ…それだと某がヒロインになるのか。いやいや今はそんなことどうでもいい。
A・クシナ。どうにも食えない相手だ。今まで観察した相手の中でも、一番心の読めない相手でもある。
「こりゃあ、創作に時間を費やしそうですな」
手元にはボロボロに変わり果てたノート。それを開くと、ポケットからマジカルペンを取り出し、サラサラと新しいページに書き足していく。
クシナは普通の生徒ではない。ミステリアスかつ油断できない相手だ。
後日―
放課後の実験室の片隅で、某はある男と対峙していた。
「約束のブツは用意できた」
そう言って、持っていた一冊のノートを相手へ差し出す。
「これはこれは…随分時間が掛かっていましたので、てっきりもう諦めていたのかと思いましたよ」
ノートを受け取った男―ジェイド・リーチは不適な笑みを浮かべながら愛おしそうにしてノートを撫でる。
「そちらが納得するものかは分からないが、書くものを書いた。約束通り某のノートを返してもらおうか」
本来の目的でもある大切なネタ帳。それを寄越せと手を伸ばす。
「まあ、見た感じ念入りに書いていただいてますし…」
パラパラとノートを捲ったジェイド・リーチは懐から一冊のノートを取り出すと、某に渡してきた。
あーあれは間違いなく、某の愛しのネタ帳だ。
「約束通りお返しいたしましょう」
急いでネタ帳を奪い取ると、中身が無事かこちらも念入りに確認する。よし、破かれていないようだし大丈夫そうだな。
「もうこんなのは二度と御免だ」
「おやおや、そう仰らないでくださいよ」
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フウカ(プロフ) - ゆうぺぺさん» コメントありがとうございます!また体調にも気を遣って頂き嬉しい限りです。これからも頑張って更新していきます。 (2021年12月3日 23時) (レス) id: 5e636c9530 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうぺぺ - 更新ありがとうございます!また、面白そうなお話ですね、リドルくんがいない中どうなるのか、楽しみです!! 体調にお気をつけて更新頑張ってください (2021年12月3日 19時) (レス) id: 1e7c50770b (このIDを非表示/違反報告)
フウカ(プロフ) - ゆうぺぺさん» コメントありがとうございます。こういった評価を頂いて嬉しい限りです!!これからも頑張ります! (2021年8月9日 15時) (レス) id: 80abe09472 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうぺぺ - 続編おめでとうございます!!今回の番外編もとても面白かったです!ジェイドさん、、頑張れ!本編の方もとても読みやすく、面白いです!これからも自分のペースで頑張ってください!! (2021年8月8日 19時) (レス) id: cad7fa7d96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フウカ | 作者ホームページ:http naru1
作成日時:2021年7月12日 20時