182話 ページ36
「今はそんな気分じゃない。いつかお前を脅す際の切り札にでもしておこう」
「おや、言わないんですね」
「知ってるのは俺だけだからな。それに、複数の武器やあの身のこなし、以前カリムを襲った刺客と同じ動きをしていた」
ああ、だからですか。
となりますと―
「あの、ひょっとしてですが催涙弾が通用しなかったのは…」
「対刺客用に訓練を受けていたからだ」
「ちなみにカリムにも催涙弾は通用しないぞ」と付け足す。
話しの流れからしてカリム先輩は裕福な家の生まれであり、過去にも刺客に狙われた経験があるようだ。その対策として、そういった訓練をバイパー先輩も受けていたのだろう。
「しかし、まさか暗殺者が学園に入学してくるとはな。まさか、スズキも同業者か？」
「スズキくんは違うと思いますよ。彼とは同じ島で暮らしているとはいえ、出身が違いますので」
私が知る限り、彼は同じ極東人であり、武士の家系ぐらいしか知らない。
「それに、私はここの“生徒”。わざわざ人を殺しにあの島を出たわけではありません。あくまで、魔法の勉強をしに、ここに来たわけですから」
「だからご安心を」と付け足す。
先輩もこれ以上は追求せずただ、「…そうか」と返答するだけだった。
今度は私が問いかける。
「バイパー先輩は、どうして逃げ出さなかったんですか？」
「は？」
「あの人を本気で恨んでいるなら、殺してでも逃げ出せばよかったじゃないですか」
「…」
「貴方でしたら、刺客よりも簡単に殺せたはずですよ。そのユニーク魔法があれば、自害や他殺、事故に見せかけた殺害だってできたはずです」
「…」
「ただし、本気で殺したい相手ならばですが…」
「何が言いたい？」
先輩は絞り出すような声で言った。
「あの時の続きを言います。バイパー先輩、貴方はカリム先輩のことを…憎からず思ってるってことです」
「…は？」
バイパー先輩の口から間抜けな声が飛び出す。
この顔からして、今の意味を理解できていないようですね。
「お前、今のはどういう…」
「大和言葉ですよ」
「や、やまとことば？」
「意味は…自分で考えてください」
「ハ、ハアッ!?」
だって意味を告げてしまえば怒りそうな気がしますし。
クスクスと笑う私をよそに、先輩は意味を教えろと詰め寄る。そんな彼を私ははぐらかすようにただ笑い続けるのだった。
彼がその意味に気付くまで、一体どれくらいかかるでしょうか。
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フウカ(プロフ) - 迅さん» コメントありがとうございます。ゲームが進み次第、随時更新していきます。これからも頑張ります！ (2020年9月24日 20時) (
レス) id: 80abe09472 (このIDを非表示/違反報告)
迅 - 番外編もこのシリーズも一気読みさせていただきました。読みやすい文章でサラサラと時間を忘れて読んでしまいました。ツイステもついに5章！更新頑張って下さい！ (2020年9月24日 18時) (レス) id: 7c87ff4c21 (このIDを非表示/違反報告)
フウカ(プロフ) - パルズさん» コメントありがとうございます。初めてそんなことを言われたので、ものすごく嬉しいです!!これからも、頑張って更新していきます。 (2020年8月19日 23時) (レス) id: 80abe09472 (このIDを非表示/違反報告)
パルズ - 一気読みしました！読んでてわかったんですけど、物語書くの上手ですね！読みやすいですし、表現が分かりやすくて文才があるんですね！これから更新頑張って下さい！ (2020年8月19日 23時) (レス) id: 51ed3ca6ee (このIDを非表示/違反報告)
フウカ(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます。こういったコメントを頂けるだけで嬉しい限りです！これからも頑張ります！ (2020年8月15日 19時) (レス) id: 24bde02993 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フウカ | 作者ホームページ：http naru1
作成日時：2020年8月6日 15時
