【ツイステ】モブなのに、絡んでくるのはなぜ？14 (ページ33)

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669話ページ33

その光景を見てハント先輩が言った。

「はっ！オルトくんの身体が崩れ始めている！」

「『チャリオット』っと限界まで寄せら！」

今ならいけるかもしれない。
なんとか『チャリオット』まで近付いた私たちに向かってエペルくんが叫ぶ。

「ユウ、オルトさ取り込まれだグリムっと引っ張り上げろ！」

怪物の体が脆く崩れ去り、次々とファントムが奈落の『冥府』へと落ちていく。
この中にグリムがいるはずだ。『チャリオット』に搭乗したユウくんは、あらん限りの声でグリムの名を呼ぶ。

「グリムーーーーーーーーーー!!」

「………………ウ、ウウ……………」

僅かだが、ファントムたちの嘆きの声に紛れて聞き覚えのある声を耳にする。

「………この、声ハ……コ、子分、オレ様……」

グリムだ。
他のファントム同様、オーバーブロットから解放されたことで、グリムは気を失ったままユウくんを呼んだ。

【僕……兄ちゃんのヒーローには、なれなかった……や……】

ファントムたちが崩れ落ちる今、オルトくんの身体は形を失い始めていた。
オルトくんがか細い声で言う。

「オルト…………！」

弟の声に応えるよう、シュラウド先輩は弱々しい声を出した。それが精一杯の声のようである。
魔力を全て使い果たしたことで、既に体も限界を迎えているようだ。
先輩はよろよろとオルトくんに近付くと、そのまま頭部へと倒れ込む。

「……今度こそ、お前を置いていったりしない」

【ニイ、チャン……】

すぐ近くで聞こえた兄の言葉が、弟の心を温かく包む。
シュラウド先輩の瞳がゆっくりと閉じていく。

その様子を目の当たりにしたシェーンハイト先輩は「いけない！」と叫ぶ。

「このままじゃオルトの身体ごと、イデアとグリムまで『冥府』に落ちてしまう！」

シュラウド先輩は力尽きたように動かないままだ。
このままではシェーンハイト先輩が言ったように誰も助けられないまま『冥府』へ沈んでしまう。

一体どうすれば。何か方法は。
必死で思考を巡らす中、傍らに立っていたシェーンハイト先輩が前へ踏み出す。

「行かせない!!」

力強く言い切ると、先輩は手元の手摺に片足をかけた。

「「「「!!??」」」」

その場にいた全員が息を呑む。
予想外な彼の行動に、エペルくんが声を上げる。

「ヴィルサン!?あんたなすんず！まさが……」

「待つんだ！」

ハント先輩が止めようと手を伸ばす。
しかしそれよりも先にシェーンハイト先輩は『チャリオット』から飛び降りた。