659話 ページ23
そんな相手にどう戦えばいいか。
キングスカラー先輩は舌打ちをすると、機体に備えていた『雷霆の槍』を魔法で引き寄せた。
「チッ!やはり俺たちも。この『槍』を使うしかねぇか」
先輩はこのままでは不利だと悟り、一気に畳みかける戦法を選ぶ。
槍の準備に取り掛かる中、先輩は背後にいるバイパー先輩も声を掛ける。
「おい、テメェも手を貸せ!ありったけの魔力を『槍』に注ぎ込め!」
「わかりました!いきますよ!」
恐らくリドル寮長たちと同じ方法で攻撃するのでしょう。
バイパー先輩が大きく返事をした後、槍に向かって自身の魔力を流していく。
2人の足元から黄と橙の気が現れ、双方の魔力が『雷霆の槍』へ注がれていった。
「はっ。同じ轍を踏むわけないでしょうが。オルト!」
【任せて!】
さすがに同じ過ちを繰り返すつもりはないのか、シュラウド先輩はオルトくんに攻撃を命令する。
オルトくんの両拳から再び魔力が込められていく。
「まずいぞ……今攻撃されたら先輩たちが!」
危ないと察したスズキくんが鬼気迫る表情で私を見た。
その胸中に応えるよう力強く頷く。
「私たちでなんとかしなくては」
とはいえ、私たちの魔力で攻撃を防ぐことができるでしょうか。
キングスカラー先輩のような魔法は使えませんし、一体どうすれば……
急ぎマジカルペンを取り出そうとした時だ。
懐から細長い棒状のものが一緒に抜け落ちていく。
「あ……」と声を漏らしてしまう。細長いそれはカン、と音を立てて地面を転がっていった。
慌ててそれを拾い上げると、後ろからスズキくんが「どうした?」と声が掛かる。
「なんだその棒?」
「職員さんから頂いた…………杖、です。必ず役に立つと言ってましたが……」
ふと、杖の柄部分に細い紙が貼り付いている。
何やら呪文のようなものが一文書かれていますが、これはお札?
無意識にその紙を剥がしてしまう。
その瞬間、杖がぶるぶると震えだし、蛇のように数回うねりを見せた。
杖はさらに細長く伸び、その両端は別の形状へと変化していく。
片方は鋭く尖った矢じりに変わり、もう片方は鳥の羽が現れた。
その形状を目にした途端、思いがけずその名称を口にしてしまう。
これは紛れもなく、
「弓矢……?」
何故、弓矢に?
動揺する私をよそに、スズキくんは「そうか…」と声を漏らす。
88人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フウカ | 作者ホームページ:http naru1
作成日時:2024年1月1日 15時