657話 ページ21
負ける気はしない。
双方の思いが重なった瞬間、第2試合の幕が切って落とされた。
「先輩方、気を付けてください。あの怪物の拳から攻撃が放たれるので!」
先程の戦いを目の当たりにしたスズキくんは、怪物の攻撃に注意しろと彼らに警告する。
それを耳にしたキングスカラー先輩は「なら、話しが早いぜ」と言った。
「『俺こそが飢え、俺こそが乾き。お前から明日を奪うもの―』」
先輩が詠唱を唱えるのに合わせて杖の先が光り始める。
そこから数多の砂が出現し、風に乗ってシュラウド兄弟を取り囲む。
「ほう……」
その様子を眺めていたシュラウド先輩は、我が身に降りかかる危険に臆することなくただ傍観に徹していた。
その動じない態度に、何故か違和感を覚えてしまう。
そんな思いとは裏腹に、キングスカラー先輩は自身のユニーク魔法を発動させる。
「―さあ、『平伏しろ!
先輩が叫ぶのと同時に、シュラウド兄弟の周囲に巨大な砂嵐が吹き荒れた。
以前マジフト大会で経験したものに比べても桁違いの威力を発揮している。
機体の後ろに避難しろとはこういうことだったんですね。
「うっ……ぐうぅ………」
砂嵐の中からシュラウド先輩の苦しむ声が聞こえてくる。
あの状態のままですと、数分も経たないうちに体中が干上がってしまうでしょう。
「うがっ……があああ………………
…………なーんてね」
冷めきった声が砂嵐から響く。
次の瞬間、巨大な突風が砂嵐をまっ二つに引き裂いた。瞬く間に嵐は崩れ去り、砂は呆気なく地面に向かって流れ落ちていく。
「なっ!?」
「俺の砂が……」
逃げ場のない砂地獄をこうもあっさり崩してしまうとは。
予想だにしなかった相手の反撃に、バイパー先輩たちは啞然としてしまう。
それだけではない。
「先輩方、あれを!」
私が指した先には、キングスカラー先輩の魔法によって体の至る所が罅割れたシュラウド兄弟の姿があった。
だが、一瞬のうちに罅割れた部分が元通りに修復されていく。
その様子を見たスズキくんは激しく動揺する。
「あれだけ損傷したのに、なんで戻るんだよ!?」
「恐らく、回復魔法じゃないでしょうか」
ですが、瞬時に回復するとは。
そうなりますと、先に受けた『雷霆の槍』からの傷も既に癒えているはず。
なんとも厄介な
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作者名:フウカ | 作者ホームページ:http naru1
作成日時:2024年1月1日 15時