651話 ページ15
「リドルさん、とにかく攻撃を躱しながら反撃を行いましょう!」
「分かった!!」
力強く寮長が応え、2人は一斉に走り出す。
怪物の両拳から放たれる攻撃をギリギリのところで回避しながら寮長たちは杖を振る。
「フヒッ、ムダムダムダ〜〜!!!」
後方のオルトくんが攻撃する一方で、シュラウド先輩は防御に徹底する。
息の合った兄弟の戦い方にリドル寮長たちはますます苦戦を強いられた。
「だったら、これはどうだ!?」
寮長が大きく杖を振り下ろすと、シュラウド兄弟たちの目の前に小さな光の球が出現する。
次の瞬間、光の球は瞬く間に閃光して兄弟の視界を遮った。
「うっ……」
【眩し〜〜!!】
光から逃れようとシュラウド先輩が両腕で視界を覆う。
占めた。2人の動きが一時的に止まった。
今が好機だと確信した寮長は、アーシェングロット先輩に向かって叫ぶ。
「いまだ!『雷霆の槍』の一撃でオルトの動きを止めよう!」
「しかし、槍のエネルギーが不十分では…!?」
既に『雷霆の槍』はタイタン戦で2度も使用されている。
3分の1程度しか充電されていない槍でオルトくんの動きを止めることができるのでしょうか。
躊躇う先輩をよそに、リドル寮長はチャリオットに載せていた『雷霆の槍』を起動する。
《エネルギー残量は30%です。充分な威力が得られない可能性があります》
それでも起動しますか。そう語りかけるように槍から声が流れる。
充分な威力が得られない。つまり、オルトくんの動きを止めることすらできないということだ。
苦渋の選択が迫られる中、ギリリと奥歯を食い縛ったのはリドル寮長だ。
「こうなったら………ボクたちの魔力で不足分を補填するしかない!」
「………………ハアッ!?」
常軌を逸した寮長の案に、アーシェングロット先輩は思わず大きな声を上げてしまう。
「そんな乱暴な!?」
「『充電器以外から魔力を補填してはならない』とはマニュアルに書いていなかった!」
なら、大丈夫。そう断言するリドル寮長に先輩は絶句する。
「いくぞ!」
先輩の了承もないままリドル寮長はすぐさま『雷霆の槍』に自身の魔力を注ぎ込む。
「……いいでしょう!いきますよ、リドルさん!」
埒が明かないと察したアーシェングロット先輩も槍に向かって自身の魔力を流していく。
2人の足元から赤と紫の気が現れ、魔力をエネルギー代わりに『雷霆の槍』が少しずつ光を帯びていった。
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作者名:フウカ | 作者ホームページ:http naru1
作成日時:2024年1月1日 15時