斉木空助のψ愛２【斉木楠雄のψ難】

狙え！好感度ψ大値アップ３ ページ42

.




「はー……あ、ったかい〜……」


私がすぐ後ろにある岩場に背中を預けると、水面がそれに合わせて静かに揺れる。
少し白く濁った湯は天然温泉だそうで、既に肌がツルツルになっている気がする。

大浴場の露天風呂はとても広いが、今は一人も居らず貸切状態だ。

上を見上げると、都心に近いにも関わらず満天の星空が煌めいていた。
ああ……日本最高……温泉最高です！


「……ん……？」


何か、忘れてる気がする。

私は、何の為に旅行に来たんだ？


「……あ、そうだった……」


私に対しての斉木さんの好感度を上げる為に来たんだった……！

一人でテンション爆上げしてる場合ではない！
まずは……そう、普段着ない浴衣姿を見せて視覚的に魅力するのだ。
雑誌では１０７ページに書いてあった『ドキッ♡彼の心を鷲掴み！普段とは違う私を見て！』という項目に値する。

要するに私は『ハロー効果』を狙っているのだ。
『ハロー効果』とは、ある対象を評価する時、目立ちやすい特徴に影響されて、対象の評価を歪められてしまう現象だ。
世間でいう「浴衣マジック」「制服マジック」的な事である。

しかも浴衣は淡い桃色……うん、世の男性の殆どが好ましく思う色合いだ。


「ふふ……これで斉木さんの好感度はうなぎ登りです……！」


本当は精神的にグッと心を掴んで「気が効くね、いいお嫁さんになるんじゃない？僕の」とか「君って優しいよね……本気で好きになっちゃいそう」とか言われたい！！ええ、言われたいです！！

たはーっと頬に手を添えて興奮しそうになったが、直ぐに興奮を抑え込む。

まぁ、今夜は視覚的に魅力する事を目標として、精神的にグッと心を掴むのは明日の遊園地にしよう。


「うーん……出るまでに作戦を整理しなくては、」


今の今まで愚かしい事に、頭から抜けていたのだ。
脳内で作戦会議をしなくては。

恋愛と研究開発は似ている。
明確な答えがないのだ。対象の状態、時期と場所、発想の転換・発見、様々な要因が関係して、無限の可能性が広がる。

それを見つけ出すのが私は好きなのだが、恋愛に至っては苦手なようだ。
何せ相手があのIQ２１８の天才・斉木空助だ。

ゲームで言えば、序盤のダンジョンで突如ラスボスが現れるようなものだ。無理ゲーである。


……あ、また余計な事を考えてしまった。
違う違う、今は明日の対斉木さんの作戦を練らなければ。


「……ちょっと、貴女大丈夫？顔真っ赤よ」

「……へ？」

「外国の方？駄目よ、長湯しちゃ」


いつの間に、他のお客さんが入ってきていたのか。

狙え！好感度ψ大値アップ４→←狙え！好感度ψ大値アップ２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す