page252 本番の日、一瞬の両思い ページ18
控え室に設置された壁掛けモニターから観客の黄色い歓声が聞こえる。いよいよ本番の日、私は出番になるまで控え室からヒロのライブを見守っていた。始まってから中盤まで、あっという間に時は過ぎていく。こんなにも時間の進みが早く感じるのは、彼が常に最高級のパフォーマンスをしているからだろう。私は強く憧れと尊敬の念を抱いた。出番の2曲前辺りで私は控え室を出てステージ袖へと移動した。暗がりから彼を見るとより輝いて見える。
既に何回かジャンプを飛んでいるだろうに、一切疲労した様子を見せず彼はプリズムジャンプを飛ぶ。
「シャイニングスパイラル！」
途端、衝撃が走る。風のように全身で感じる煌めき。私は目の前でそれを見て今ハッキリと思い出したのだ。
あぁ彼は、あの時の光。元いた世界、夕陽の落ちる海辺で聴こえた声と感じた煌めきは、彼のもので間違いないと確信した。私がこの世界に引き込まれた原因は彼のプリズムの煌めきだったのだ。
加速する恋心に気が付き私はその場に崩れ落ちた。どうしようもない、行き場のないこの苦しみと、この世界に導いてくれたことへの感謝の気持ちが混ざり合う。
いけない。立たなければ。いつまでも泣き虫のままの私では無いのだ。今は表現者としての役割を果たす時、氷上のプリンスが私を待っている。気を引き締めたと同時に照明が落ちる。スポットライトがじんわりと彼を照らすのが合図、私はステージへと歩き出した。
今まで披露していた曲とは違う雰囲気の為か、会場の客人達は静まり返り彼の美しい声だけが響き渡る。私は曲に合わせて踊った。歩いたり回ったりして、この会場の空気と音楽を全身で感じるように舞い踊った。
私の歌うパートに入ると音楽が盛り上がってくる。結ばれそうで結ばれない男女の恋心を綴った歌詞に、今の自分の心情が重なる。切なく、もどかしい思い。
やがて向き合ってお互いの歌声を重ねるとき、彼は仮面越しの私の目をしっかりと見つめていた。その瞳と歌声に、暖かいというだけでは足りない熱を感じる。
それが演技なのか本物なのかは分からないが、今この瞬間2人の心は繋がっていた。
1曲を1つの物語のように仕上げた演出は、客の目を釘付けにさせる。ラストのサビが終わると、盛大だった音楽は静まり、私のソロパートになる。私は最後まで歌いきるとステージに背を向け立ち去った。終わってしまった。有り得ないほどあっという間に。あの時私を見つめる彼は間違いなく、私を欲していた。あの瞬間だけ。きっと芝居をしていたあの一瞬だけ。それでもほんの少し期待をしてしまっている自分が恥ずかしく思えた。
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kiko(プロフ) - ななしさん» 初めまして！読んでいただきありがとうございます。ハピなるになっていただけたようで私も嬉しいです^^他の方の作品あまり読んだことなかったので、チェックしてますね！ (5月28日 3時) (
レス) id: 22e3e6f4b3 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 初めまして、kikoさん、作品とても素敵でキュンキュンです(照)私の友人もプリティーリズムの作品書いてるので良ければ読んで下さい(( (5月23日 4時) (レス) id: 3b8bc56239 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiko | 作成日時：2022年12月13日 12時
