page247 渡された楽譜 ページ13
ヒロとのショーの為、練習を続ける私だったが、同時進行で進めなければならないものがあった。
「シーズンカップの話なんだが。」
呼び出された礼拝堂で、氷室主宰がそれを話し始めた。
「是非…君に使って欲しい曲があってね。」
そう言うと彼は近くに置いていた楽譜を私に見せた。題名の欄には『 nth color 』と書かれている。
「この曲は……?」
そう問うと彼は暫く黙り、どことなく切なそうな表情をした。
「君は不服かもしれないが、少し、試してみたいんだ。」
「試す…?」
「君ならこの曲を表現出来る…何かきっかけを生み出すことができるかもしれない…そう思ってね。……すまない。私の我儘だ。聞き入れてもらわなくても構わないよ。」
神妙な面持ちでそう言われ、私はまた楽譜に目を通す。いつも凛とした彼の弱々しい部分を見たのは初めてだった。主宰、というより、氷室聖という1人の人間として依頼をしている。そう感じた。
「分かりました。これで練習してみます。」
「本当か……?無理にとは言わない!変更したくなったら、いつでも相談してくれ!」
「はい、そうします。でもこの曲、私もやってみたいなと思ったので。」
笑顔で応えると、彼はようやく安心した表情で感謝を伝えてきた。深くは聞かなかったが、彼の中ではとても重要なことだったのだろう。そう判断した私は彼の願いを快く受け入れることにした。
礼拝堂を出て、寮へと続く通路を、私は寮の外観や花壇を見ながらゆっくりと歩く。
この場所で過ごし始めてから、かなり経ったなぁ。そんなことをふと思いながら、吹き抜ける風に当たっていたその時、どこからか私を呼ぶ声がした。そちらを向くと、全力で手を振る一条シンと、西園寺レオの姿が見えた。
「Aさーん!!一緒に休憩しませんかー!」
何やら楽しそうな予感がする。私は彼らの誘いを受け、そちらへ駆け出した。
「さ、皆の為に作ったから、沢山食べてね。」
誘われるまま食堂に着くと、鷹梁ミナトが寮生たちへ手作りのお菓子を用意していた。
皆瞳を輝かせ、テーブルに並べられたクッキーやマフィンなどを見つめる。
「やっぱおやつタイムにも、ミナトっち大活躍だねぇん。」
「どれも美味しそうですー!」
『 いただきまぁす!』
毎度、子供のようにはしゃぐ彼らを見ているとクスリと笑わずには居られない。かくいう私もコウジやミナトが出す手料理には心が踊るのだが。
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kiko(プロフ) - ななしさん» 初めまして!読んでいただきありがとうございます。ハピなるになっていただけたようで私も嬉しいです^^他の方の作品あまり読んだことなかったので、チェックしてますね! (5月28日 3時) (レス) id: 22e3e6f4b3 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 初めまして、kikoさん、作品とても素敵でキュンキュンです(照)私の友人もプリティーリズムの作品書いてるので良ければ読んで下さい(( (5月23日 4時) (レス) id: 3b8bc56239 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiko | 作成日時:2022年12月13日 12時