page80 聞き間違い ページ32
ーカヅキsideー
やっべぇ仕事長引いちまった。コウジ飯作って待ってるはず…
寮まで走っていくと、玄関に人が立っているのが見えた。走るのをやめ、歩いて近づく。
カヅキ「あれ、タイガじゃねーか!」
タイガ「…!カヅキさん…」
そこにいたのは香賀美タイガ。同じストリート系の後輩である。
カヅキ「どうしたんだ?中入らねーのか?」
タイガ「……」
尋ねてもタイガは黙りとして、口を開かない。
カヅキ「……タイガ?」
するとタイガはため息をつき、カヅキに向き直った。
タイガ「…カヅキさんでも、信じてもらえないと思うんで…」
なんのことかさっぱりだが、後輩が困っているときに手を差し伸べるのが先輩である。カヅキはタイガの肩をガシッと掴んだ。
カヅキ「大丈夫だ言ってみろ!なんでも聞いてやるよ!」
タイガ「カヅキさん…。いや、ほんとに俺のただの聞き間違いかもしれないんですけど…」
そう言うとタイガは寮を見上げた。
タイガ「…上の方から声がしたんですよ。…女、の…」
女…ああ、Aの事か…
カヅキ「そう、なのか?」
タイガ「この寮は男しかいませんよね?なんで女の声がするんすか!おかしいっすよ!」
カヅキ「ま、まぁ落ち着けってタイガ……幽霊なんていやしないし。」
タイガ「なっ!ななななにいってんすかカヅキさん!幽霊なんているわけないじゃないっすか!」
うん。Aだもんな。幽霊なんかじゃなく。でもそれを言うわけには…
カヅキ「じゃあ俺が見に行ってやるよ!それで誰もいなかったらお前の聞き間違いってことで。」
タイガ「そ、そんな危ないことカヅキさんにやらせるわけには…」
カヅキ「へーきへーき!」
ひらひらと手を振って寮の中に入る。
誰もいないわけないが、いないことにしておこう……
とりあえずコウジに謝らないとな。
コウジの部屋に入ると、仕事が終わって帰っていたヒロと、コウジと…Aがいた。
カヅキ「わりぃ!仕事長引いちまった!」
コウジ「おかえりカヅキ。お疲れ様。」
ヒロ「お疲れ様。」
A「お疲れ…様です。」
良かった。全然怒ってない。
カヅキ「あのさ、さっきタイガが女の声がしたって怖がってたんだけど、Aなんかあったのか?」
A「え…あぁ、もしかしたら…」
ヒロ「ベランダにいたからかもね。」
ベランダ…だから外に声がもれたのか。
カヅキ「なるほど。まぁタイガには女なんていなかったって言っとくけどな。」
部屋に笑い声が響き渡った。
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作者名:kiko | 作成日時:2018年7月1日 16時