煌めきを君に

page9 警戒3 ページ9

行きに歩いた道を、人がいないか確認しながらまた歩いていると、自分の部屋の近くにベランダがあることに気づいた。
扉の向こう側には踊れるほどのスペースがあり、夜風が吹き抜ける。しばらくベランダを眺めていると、ヒロが口を開いた。

ヒロ「気になる？あそこはね、あんまり人が出入りしないし、風が気持ちいいし、僕もよく行くよ。今度行ってみるといいよ。悩んでることとか、スッキリ飛んでいく感じするから。」

どうやらヒロもお気に入りの場所のようだ。
確かに１人になりたいときは、穴場かもしれない。

ヒロ「ほら、そろそろ君も寝た方がいいよ。また明日色々話そう。よかったら、町を案内するよ。君の記憶が戻るまで、引きこもっているわけにはいかないだろうし。」

彼はAに優しく笑いかける。昼間の眩しい笑顔とは少し違う、あたたかな目で。

背中を押され、部屋に入るよう あおられる。

ヒロ「何かあったら、僕は向こうの端の部屋にいるから。いつでもおいで。基本鍵はかけないからさ。それじゃおやすみ。」

ヒロは静かに扉を閉めた。

そういえば、今日会ってからあまり話せていない。あんなに優しく接してくれたのに、自分から話すことはほとんどなかった。

……………失礼だったかな。

Aはそう考え、明日はなるべく話せるように、と自分に言い聞かせた。

こうしてAのエーデルローズ寮生活は
始まった。

page10 知らない世界→←page8 警戒2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す