○ ページ10
「……俺に似てるよ」
『え？私が、？』
「うん。」
私が佐藤くんに似てる？
運動も勉強もできてかっこよくて、学校で一番モテてた佐藤くんに？
「静かに過ごすのが好きで、目立つことが好きじゃなくて。」
あれ？おかしいな。佐藤くんの周りにはいつもたくさんの人がいたし、ものすごく目立ってたはず。
「でも、実はめちゃくちゃ負けず嫌いなところとか、俺とそっくり」
そう言いながら得意げに笑った。
『どうしてそれを…』
全てが自分に当てはまって、思わず目を逸らしたくなる。
学校で私の性格をまともに知っているのなんて親友くらいで、あんまり知られてなかったのに。
「俺がテストで一位取った時、張り出された順位の前にいたところ見て、あ、この子負けず嫌いなのかなーって」
すんごい顔してたからね、と言ってくすっと笑った。
当時の私の姿を想像する。眉間に皺を寄せて、ちょっと拳を握りしめて自分の名前をじっと見つめる私。
なんだか子供っぽくて恥ずかしいな。
「次のテストで一位に返り咲いてきたとき確信した」
『そんなとこ見られてたなんて………』
「俺もすっげー負けず嫌いだからさ、なんか勝手に親近感湧いちゃって」
佐藤くんはまた小さく笑った。
高校生の頃すでに親近感を持ってくれていたなんて、少し驚いたけれどそれよりも嬉しい気持ちが勝った。
『ありがとう？』
「なんで疑問系なの？笑」
『なんか嬉しくて………！』
ブー…ブー…
「……………大丈夫？すごい量来てるけど」
佐藤くんに言われて初めて、私のスマートフォンに絶え間なくメッセージが届いていることに気がついた。
“ねぇ、俺何した？”
“どこいんだよ”
“ちゃんと話し合おう”
相手の名前なんか見なくてもわかる。
寄りを戻す気なんかないし、今は佐藤くんと話しているんだから。そう思ってまたスマホの画面から目を離す。
『大丈夫、大丈夫』
「ほんと？なんか凄いこと書いてあるけど…」
佐藤くんが指を差す先に私は目線を戻した。
『えっ………』
画面に映し出された文面をしっかりと目で追った。
“もう女遊びは絶対にしないから！”
“約束する”
「バレたと思って白状しちゃった感じ…？」
『やっぱり………』
お気の毒にと言わんばかりに苦笑した佐藤くんとは対照的に、私は呆然としていた。
そんな私に佐藤くんは「大丈夫？」と声をかけてくれる。
『うん、大丈夫。』
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作者名：佐藤愛莉 | 作成日時：2021年1月18日 17時
