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ただ、
何故佐藤くんが私のためにここまでしてくれるのか
どうしてもわからない。
高校が一緒だったとは言え、クラスが同じだった事はなくて
直接話した事はほとんどないし。
私は廊下を進みながら必死で乱れた髪をとかす。
……いい匂い
トーストか何かだろうか。
香ばしい香りが漂う。
『お待たせしました……』
「んじゃ食べよっか」
いただきます、と2人で手を合わせる。
いつぶりだろう……?
付き合ったばかりの頃は彼氏ともこうしてよく2人で食卓を囲んだものだが、いつしかその頻度は減っちゃってたもんな〜。
「Aさん、食べなよ」
『あ、ごめん……いただきます』
『ん〜美味しい〜』
あたたかい野菜スープに、こんがりと焼かれたトースト。そしてハムエッグにコーヒー。
「このスープ試しに作ってみたんだけど……」
『本格的でとっても美味しいです、!』
たぶんこの味は、具材を長い時間煮込まないと出ない味だと思う。
佐藤くんって料理もできるんだ。
「よかった、笑」
佐藤くんは目を細めて微笑む。
「Aさん、思い出させるようで申し訳ないんだけどさ」
『はい……?』
「元彼さんとは正式に別れたの?」
私の脳裏に昨日の言葉が蘇る。
思い出したくないけれど、忘れられそうにもない。
だって、元カレの事を信頼してたし
何より好きだったから。
『まぁ……一応ラインで伝えたけど……』
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作者名:佐藤愛莉 | 作成日時:2021年1月18日 17時