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Aside
「そういう事で……思い出した?ちなみに俺、Aさんと高校一緒だったんだけど」
思い出した。何もかも。
酔って寝ちゃって他人にお世話になるなんて、なんて粗相を……。
21年の人生史上、一番の大失態。
しかも、この人……
高校時代よくきいた“佐藤勝利”という名前。
私の親友も、隣の席の中島くんも
確かみんなこう呼んでいたような……。
『顔面人間国宝、ですよね?』
「顔面人間国宝ねぇ……笑」
まぁ、間違ってはないけど
と少し困ったようにキュヒと笑う彼……佐藤くんはちらりと壁掛け時計を見る。
「朝ごはん出来てるから食べようか」
『はい……』
部屋を出ていく彼の背中を数秒見つめてからベットを軽く整えた。
服も化粧も髪も昨夜のままで、
きっと今の私は酷い顔をしている。
まさかこんな姿で学年一のイケメン、顔面人間国宝と呼ばれる佐藤くんの家にいるなんて。
私にとって今の状況は夢のようというよりかは恐怖体験に近い。
佐藤くんに寝顔や寝起きの浮腫んだ顔を見られてしまった恥ずかしさや、
酒癖の悪い奴とか、彼氏に裏切られたかわいそうな奴とか、悪いイメージを与えてしまっていないかという心配が、
心の中を渦巻く。
「何してんのー?」
リビングから優しい声がした。
『今行きます……』
「わかった、笑」
全てを包み込むような温かい声に、
“佐藤くんならきっと大丈夫。”
根拠はないけれど、何故かそんな気がした。
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作者名:佐藤愛莉 | 作成日時:2021年1月18日 17時