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#43 side
紫陽花の季節が終わろうとしている頃、急に思い立って散歩に出た帰り道。
…あ。
彼女の姿を随分と久しぶりに認めた。
相変わらず何を考えているか分からない表情で、まっすぐ歩いている。
なんだ、最近見なかったのはやっぱり学校に行く時間が変わったからだけだろう、そう思って俺は歩き始めた。
そして、すぐに振り返った。違和感があったから。
彼女の目は何も捉えていなかった。
けれど、しっかりとした足取りで、確かにそこへ向かっていた。
地元の人もあまり寄り付かない、山への入り口。
噂で聞いただけだが、ほど近い所に川の上流があり、少し歩くと渓谷と高い吊り橋があるという。
その話が、俺の頭を突然に駆け巡った。
そしてそれが、彼女の瞳と結びついた。
気づいた時にはもう走り出していた。
勘違いならそれでいい。
どうか勘違いであってくれ。
激しくなる鼓動は、きっと息が切れたからではない。
嫌な汗が背中を伝う。
道の左右も分からないまま走り続け、吊り橋に辿り着いた時には
彼女はそこにいた。
(嫌な予感ほど、よく当たる)
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2019年6月10日 21時