starlight night (ページ47)

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「え、相談？」

榊原さんが目を丸くした。

「Aちゃんなら由伸に相談しそうなものを」

「えっと…その、山本さんの事でして…」

私と向かい合っている、榊原さんと山岡さんが顔を見合わせる。

そして、私に先を促した。

「実は、山本さんの事を見ていたら最近なんだか変な感情になるんです。

何だろう、直視が出来ないというか、少しだけ胸が苦しくて」

榊原さんと山岡さんはまた顔を見合わせた。心なしか笑い合った気がする。

いつから、それは多分明確だった。

あの夜。

山本さんが怪我をして、私が大学に行かない事を決めて、山本さんの体温を感じた夜。

あれからもう山本さんのお怪我は治って、元気にローテに復帰されている。

一瞬だけ止まった時計の針はもうとっくに動き出しているけれど、その日から少しずつ私達の関係の形が変わっていた。

山本さんが優しくなった。

もちろん、今までも相当優しくしてくださっていたけれど、それに輪をかけて、どんな時でも。

そしてそんな山本さんの事を見ているうちに、私は、自分が経験した事のない感情に支配されている事に気付いた。

うまく話せない。
けれど、もっと話したい。

夕焼けに目を細める彼の横顔を、もっと見つめていたい。
けれど山本さんを見つめていると、胸が締め付けられるように苦しくなる。

それが全部ただのわがままである事に気付いて、これ以上迷惑をかける前に信頼出来るお2人に相談する事にしたのだ。

「Aちゃん、」

山岡さんの声に、俯いた顔を上げる。

「もう、その思いに名前を付けても良いんじゃない？」

榊原さんも微笑んだ。

「由伸はほんとに良い奴だよ」

「知ってます」

名前…？

首を傾げ、その言葉の意味を考える。

本当はどこかで、気付いていたのかもしれない。

その事に気付けない幼さと、駄目だと自分を抑えつける呪いの後遺症と、2つが私の首を傾げたままにさせていた。

(呪いは、いつ解ける？)