検索窓
今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:99,784 hit

45 ページ46

#43 side


「え?」


今?

いつでもいいよと言っていた、Aちゃんの将来の答えを今聞くとは思わなかった。


何故このタイミング?



Aちゃんが俺の服の袖を掴む。


泣きながら、けれどしっかりした言葉が発せられる。




俺と夜だけがその声を聞いていた。





「そんなことしてる場合じゃないんです。


私は山本さんに元気でいて欲しくて、だからそのために今生きてて、

…ここで山本さんをほんの少しで良いから支えたい。


そのために出来ることなら何でもしたい。



今日、こんな事になってやっと気付かされました。


今は大学じゃない。


山本さんの近くじゃなきゃ駄目なんだ、って。





おこがましいこと極まりないのは分かってますが、

私のやりたいことはそれです。


それだけなんです。だから…」






「…ごめん、」




声が掠れた。







抱きしめて、良い?









その返事を聞く前に、Aちゃんを抱き寄せた。




月明かりがふと消えて、俺達の姿を隠した。







Aちゃんの真っ直ぐな瞳でそんな事を言われると、もう耐えられなかった。



アクシデントで波が立っていた心が落ち着いて行くのを感じる。







Aちゃんを感じる。







「や、まもとさん…?」




戸惑ったふうだったが、Aちゃんは拒まなかった。

そして、おずおずと俺の背中に手を回した。



「…ごめん、急に」



けれど言葉とは裏腹に、俺はまだ離す事が出来ずにいた。




「いえ…私、」






もう少し、このままでいたいです。






その少しだけ震えた微かな声で、今までの過去に囚われた暗い感情が夜に溶けるのが分かった。





全てを捨てて抱きしめて、残った感情はただ一つ。





もう、それで良いんだと思えた。怖がらなくて良いと。








今のこの思いが、きっと全ての正解だ。









(俺は、Aちゃんが好きだ)

46→←44



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (86 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
188人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:るる | 作成日時:2019年6月10日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。