39 ページ40
#43 side
家に帰る車内で、どこか嬉しそうなAちゃんが気になって尋ねた。
「何か今日凄いニコニコしてるね?良いことあった?」
「えっ、そんなにニヤけてますか…?
いや、実は…」
どうやら、高卒認定試験の問題集を借りてきたらしい。久しぶりに勉強をするから楽しみだと笑っている。
…楽しみ、ねぇ。
「Aちゃんは高卒認定考えてるの?」
「いえ、今のところは何も」
とは言ったものの、家に帰って問題を解いてみたAちゃんは結果から言うと物凄く優秀だった。
採点した職員さんが驚いて何故か俺に伝えてきたほどだ。
「これ、高卒認定どころじゃなくて難関国公立とかも狙えるレベルよ…!」
「いやいや無理です」
Aちゃんは首を大きく振っている。
職員さんもさすがにオーバーではないかとは思うものの、数ヶ月全く何もしていない状態での成績でそれなら相当凄いのではないかと思う。
俺にはよく分からないけれど、勉強すればきっとかなり良い大学に行くことだって出来るんだろう。
学校生活を奪われる事がなかったら、Aちゃんはどんな生活を送ることになったのか、改めて考えざるをえなかった。
「…Aちゃんはさ、大学行きたいとか思ったことある?」
Aちゃんは俺を見て、首を振った。
「将来なんて考えた事なかったですし」
「何か勉強したい事があったりは?」
「…うーん…」
少し考え込んだ様子だったが、Aちゃんはふわあとあくびをした。
今日も仕事、頑張ってたもんな。
「まぁ、Aちゃんの事だからさ、自分でゆっくり考えてみるのも良いんじゃないかな」
「…はい。そうします」
頭を撫でると、Aちゃんは少し目を細めた。
眠い時のAちゃんは普段より素直になり、行動が可愛くなる。
「おやすみなさい」
少しとろんとした目で俺を見て微笑む、そんなAちゃんの将来を考えてしまう。
Aちゃんはずっとここにいて良いのだろうかという事も。
…大学は行っておいた方が良いのかもしれない。
行っていない俺が言えた話じゃないことは分かっているが、勉強しておいて損はないと色んな場面で痛感していた。
もちろん、Aちゃんの意思が1番大切ではある。
それはもちろんだが、
(俺は、どうすべきなんだろう?)
188人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るる | 作成日時:2019年6月10日 21時