starlight night (ページ32)

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ねっとりとまとわりつくような声は、今も変わっていない。

「あれ？お前、こんな所で何してんだ？

あ、もしかして働いてんの？

私が高校行くの許してやったのに、何してんだよォ」

そうだ、中三の冬だ。

突如、「お前、高校行っても良いよ」
そう、いつの間にか家に住みついていた父の恋人から告げられた。

父はその頃上機嫌だった。

上機嫌で、自分の娘を殴った。

そこに殺意が見えなくて、殴られながらもほんの少し安心したのを覚えている。

恋人にも殴られた。
けれど父の力を知っている分、女性である恋人の殴る力は弱く、こんなものかと思ってしまえるほどにダメージは少なかった。

彼女がぶつける言葉の方がよほど酷かった。

だから、その声がトラウマなんだ。

声が出ない。

言い返せないのをいい事に、彼女は私に沢山の言葉を浴びせた。

ストレスの捌け口をもう一度見つけられた事が、そんなに嬉しいですか？

高一の夏。
アパートの階段ですれ違った時、私に「アンタも色々大変だね」と言葉をかけた。

「せいぜいあの男に苦しめられな」

あの男？呼び方に違和感を覚えた私が急いでアパートに戻ると、父親が豹変していた。

別れは、人を変える。

父は酒とパチンコに溺れた。
より一層私に強くあたった。
それは殺意すら感じるほどに。

限界だった。

大切な場所で、この女の人の声を聞き続ける事が。

「あぁああああああああああああああああああああああああああああっ…！」

声にならない叫び声が体の奥から絞り出された。

耳をふさいでしゃがみこむ。

「Aさん！？」

遠くで先輩の声がする。

(意識が遠くなるのが分かった)