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「そう言えばAちゃんって誕生日いつなの?」
山本さんが、テレビの歌番組で流れるバースデーソングに反応して私を見た。
少し考えて日にちを告げる。
この前履歴書を書いた時に見て以来気にしていなかった。
「え、もうすぐじゃん!どこか行こうか」
「いや、お心遣いは有難いですけど良いです。
私、誕生日あまり好きじゃなくて」
誕生日が好きじゃない。
それは珍しい事だと、働き始めて分かった。
また老けてしまった〜、なんておどける先輩も、口では嬉しくない嬉しくないと言いながら実際は楽しんでいるように見える。
選手の誕生日をお祝いする写真を公式インスタグラムにアップする事もあり、誕生日が盛大に祝われるものである事を知った。
そういえば高校に行っていた時、珍しく私のではなく隣の机に何かモノが溢れ返っていたことがあった。
あれはたぶん、私のようにゴミだとか汚物だとかを載せられていたのではなくて誕生日祝いのプレゼントだったのだろう。
いじめーといっても家が地獄だった私には可愛いものだとしか思えなかったけれどーとお祝い、ぱっと見が似ているのはなんとも皮肉なものだ。
閑話休題、それは7歳の誕生日を迎えた、小学一年生の頃だった。
今でも覚えている。
折り紙で作ったメダルを貰った私は、父親に見せたくて家へ飛んで帰った。
その時の父の様子がおかしかったなんて、7歳の私は気づけなかった。
私の誕生日。
初めて、父親に殴られた日。
記念日になり得るはずがない。
(その時からずっと、誕生日が嫌いだ)
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2019年6月10日 21時