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目を覚ますと、白い天井が目に飛び込んできた。
ここは…?と辺りを見渡し、あぁ病院かと気付く。
病院に来るのなんて、一体いつぶりだろう。
連れて来ても貰えなかったもんな…
「あ、Aちゃん、起きた?」
聞こえたその声は、胸にじんわりと温かさが広がる声だった。
「や、まもとさん…」
「良かった、記憶はしっかりしてるんかな」
私はどうしてここにいるんだっけ。
朝からお仕事で、グッズについて色々話してて、
…あぁ、そうだった。
思い出してひとつ息をつく。
「…ごめんなさい」
ベッドの横の時計は夜の8時を指していた。
おそらく、練習終わりにチームを抜けてそのまま来てくださったんだろうということは、聞くまでもなく分かった。
「ごめんなさい、迷惑をお掛けして。
…わたし、やっぱり…」
ここにいてはいけないのかもしれない。
山本さんに迷惑を掛けたくて、ここにいた訳じゃない。
こんなにお世話になっているのに、私、一体何をしているんだろう。
「…ごめんね」
山本さんの顔が泣きだしそうに歪む。
「なんで山本さんが謝るんですか」
「ごめん、俺がもっとちゃんと…。
…守れなくてごめん」
「何言ってるんですか、そんな…」
どうしてそんなに苦しそうなんですか?
どうして、そんなに泣きそうな顔をしているんですか?
自分が受けた苦しさより、その事が悲しくて涙が出てきた。
あなたにそんな顔をさせたいわけじゃないのに。
私の涙を拭ってくれた山本さんの手は今日も温かかった。
その温もりに安心して、
けれどその表情は苦しそうで、
色んな感情が渦巻いてもう一筋だけ涙が零れた。
私を何度も、何度も救ってくれたその手。
「ごめんなさい…」
結局それしか繰り返すことが出来なくて。
病院の夜は、痛く、重かった。
(今夜は星が見えない)
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2019年6月10日 21時