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☆190 ページ5

じゃあ邪魔者はこれで、とか何とか言って、
お母さんがリビングを出て行く。

ちょ、っと待って…………。




ガシガシとタオルで髪を吹いていた手がおろされると、
濡れた髪の隙間からこちらを見る瞳が覗く。

ポタ、と茶色い髪の先っぽから水がタオルに落ちるのが、とても、ゆっくりに思えた。



「…なんでさっき、うそついたの」

「うそ?」

「俺ら、初めて会ったの、東京じゃないやん」

「………あ、」



そうだ、
高校生の時、廉に誘われた展示会で。

はじめてショウさんに会ったのも、
はじめてショウさんの絵を見たのも、あの時だ。



「忘れてた?ひど、」

「東京で助けてもらった時の印象が強くて…」

「俺は初めて会った時のことめっちゃ覚えてんのに」

「………」

「みんな、俺の絵をすごいすごいて言うくせにさあ、あそこまで理解してくれた人、それまでいなかったし」

「………そうだ、あの時、また会えるとか、言ったじゃないですか」

「んー?あ、そういえば言ったっけ」

「えっ、そんな感じなんですか、適当?」

「でもこうやってまた本当に会えたじゃん」



運命、だったりしてね。なんて。

ふふって微笑んで。


そんな、もう、自惚れじゃなくて。これは。




「すき」





今2人だけの空間で、
私にだけ向けられた言葉。

返事ができないのをわかってるとでもいいたげに、力なく笑った。




「家、無理矢理押しかけてごめんね」

「それは…ほんとにそうです……」

「あは!いや実は、星をみたくて」

「…………星、」

「A、一時期いつも空見てたじゃん?なんにも見えないのにさ。それって、昔みてたものをみたかったのかなあって」

「あ…はい……。ここ田舎だから、よく見えるんです」

「ちょっと見に行ってくる」

「外暑いですよ?」

「んー、ちょっとだけ」




ショウさんの後を追って、外へ出る。

田舎の夏は、とても蒸し暑い。




「わ、めっちゃある」

「私も久しぶりに見ましたけど、こんなにあったっけ…」

「近くね?届きそう」

「あーそれ私もよく昔思ってましたー!手伸ばしたら掴めそうですよね!」






一緒に見てるのは、………廉じゃないのに、
全く違和感がないのが悲しかった。

だから、あのバス停は絶対行きたくなかった。
あそこは廉と私の場所だもん。

そうやって、
廉が好きで、忘れたくない私と、
現在進行でどんどんショウさんに惹かれていく私と、

ごちゃごちゃになって、こわれそうになる。

☆191→←☆189



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設定タグ:永瀬廉 , 平野紫耀 , ジャニーズJr.   
作品ジャンル:恋愛
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◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です!!初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました(笑)この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆい☆ | 作成日時:2017年1月18日 12時

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