☆（1） ページ34
「やめる、の？」
「うん。だって、A、帰っちゃったし」
ストローでグラスの中の氷をころんころんと混ぜながら、ショウが何てことないように言う。
そんな、簡単にやめるだなんて。
ショウの才能が欲しい人は、山ほどいるというのに。
昔からショウは、自己評価がとても低い。
「………ごめんね」
「え？」
「俺のせいなのに。ミナミが、かけなくなったの」
「まだそれ言ってるん？もうええよって何度も言ってるやないの」
「…でもまだ、怒ってるやん」
「そんなこと、
「俺がまた、描けるようになったから？」
言われて、
視線を逸らす。
そうだ、ショウは、勘も昔から鋭い。
図星だった。
負った痛みも、傷も、
おあいこだったから、許してほしかったし、許したの。
なのに、いつのまにか、ショウが元気になってたから。取り残されたみたいで。
「…さみしかっただけ」
「それだけ？」
それから、………それから、
「ウチのこと、もう好きやないんやなあ、って。思っただけ」
「うん。好きやったで」
「かこけい〜〜〜」
「ミナミやって、過去形やろ？」
「……そ、やね。ショウのこと、好きやったよ、過去形！」
あほ。あほ。ショウのあほ。
勝手に過去形にすんな、あほ。
「でも俺、今も失恋してんの、あはは、」
「…そうなん」
「帰っちゃった、なあ、」
Aちゃん。
ショウの傷を、癒した子。
その証に、ショウの口からは、よく、Aちゃんの名前が出る。
「失恋したから、やめるの？」
「描くの？」
「そう」
「ちゃうよ〜〜〜！ただ、仕事続けようにも、1人じゃできないでしょ、でも知らない人雇うのも、やだし」
「ウチ」
「え？」
「ウチ、が、やろうか？手伝おっか？」
「ううん、ええよ。そんなことして、ミナミやって、呉服屋の仕事どうすんの」
「あれはただ、実家の手伝いやし」
「そんなら、ミナミが描きなよ」
「ショウ、」
「描いてよ、描いてほしいなあ」
そっか。
もしかしたら、ショウは、今も傷は完全に癒えてないのかもしれない。
Aちゃんのおかげでなく、
Aちゃんのため、に
描いてたのかな。
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◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (
レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です！！初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました（笑）この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2017年1月18日 12時
