☆（5） ページ32
許嫁がいるだなんて知らなかったけれど、
正直、あの頃の俺は自暴自棄になっていた。
新田が幼馴染くんを追いかけて東京へ行ってしまい、俺の恋が完全に終わって。
大学へ進学してから、何人かと付き合ったが、どれも長続きせず。
そんななか舞い込んできた結婚のお知らせ。
もうどうにでもなれと思っててん。
誰でもいい、
どうせ、俺はあの恋を忘れられない。
相手は、絵に描いたようなお嬢様だった。
行動も思考も、温室で、大事に大事に育てられた花のよう。
いくらお嬢様であっても、今時ここまで世間知らずにさせるかってぐらいの。
めっちゃ両親は過保護なんやなあ。箱入り娘とはこのこと。
純粋で、真っ直ぐで、
かと思えば、どこかへ飛んでいきそうで、放っておけない。
_____似てると思った。新田と。
東京での1ヶ月の滞在の間、
街へ出れば、必ずキョロキョロと辺りを見渡すのが習慣になっていた。
新田と会えるんじゃないかと期待して。
自分から連絡する勇気はないくせに。
お嬢様は、割と俺には冷たい。
何度かデートしたけど、特別俺を気に入ってるようではなかった。
まあ。
うん。そんなもんよな。
政略結婚やし。
お互い好意がなくったっていい。
嫌いでなければ、上手くやってけるやろ。
俺も別に………好きでも嫌いでもない。
ただ、新田と少し似てるから、ついつい目で追ってしまうだけ。
そう言い訳付けては、お嬢様のふとした笑顔が見えたときの胸の高鳴りを、なかったことにした。
順調すぎるくらいにコトは進んで、
結婚式を終えると、お嬢様との同居が始まった。
あまりお互いに干渉せず過ごして3週間ほどたった頃。
実は朝は弱いタイプの俺は、その日が休日だったこともあって、随分とゆっくりめに起きた。
もそもそとリビングへ向かい、コーヒーメーカーのスイッチを入れて、その場でぼうっとする。
ええっと、明後日までのレポート…それから読みかけの本が2冊…
今日の予定を脳内でカチャカチャ組み立てていると、ドタバタと騒がしく走り回る音がした。
お嬢様改め、杏ちゃん。
これから出かけるみたいだけど、何やらかなり急いでいるようで、
何度も時計を確認しては、家の中を行ったり来たりしている。
どこへ行くのか、それは知らない。そこまでは、干渉しない。
そんな距離感の俺ら。
まだぼうっとしている俺の前を通り過ぎていく杏ちゃんが、
足を加湿器に引っ掛けたのが見えた。
ぼうっとしていた脳が、クリアになっていく。
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◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (
レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です！！初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました（笑）この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2017年1月18日 12時
