☆（4） ページ31
その日はそのまま、タクシーで私の家の前まで向かった。
「俺、これから1ヶ月間、東京に滞在すんねん。どうせまた今日みたいに2人で過ごせ言われるやろうし、そんときはよろしくな。」
「うん。」
「じゃあね、杏ちゃん」
手をひらひらっと振って、男の子の乗ったタクシーが遠ざかって行く。
去り際、笑ったときに見えた八重歯がかわいかった。
「…………私の名前、知ってたんだ…」
私みたいに、ちゃんと聞いてなかったのかと思ってた。興味なさそうだったし。
そのあと、慌ててママに聞いて、
男の子の名前が大吾くんだと知った。
大吾くん。
西畑、大吾くん。
私の、結婚相手。夫になる人。
まだまだ知らないことがいっぱい。
今日わかったのは、顔がかわいいってこと。でも性格は…うーん……結構がさつ？ううん、男っぽいかも。
走ったから、って素っ気なく言ったときの、横顔。
………走って探してくれてた。
ふうん。ふーん。そっか。
それから1ヶ月の間、何度か一緒に出かけた。
やっぱり顔がかわいい。
背はちょっと低い。
頭の回転がはやい。
少し意地悪。いや、結構意地悪。
なんだかんだ、優しい。
瞳が、キラキラしてる。
そうやって出かけるたび、私のなかで新しい大吾くんが増えていった。
大吾くんは色んなことを知っていて、出かける場所も、ゲームセンター、カラオケ、映画館と、私が普段行かないようなところばかり。
私が何も知らないしできないから、大吾くんはバカにするけど、最終的には助けてくれる。
大吾くんといると、本当に時間があっという間に過ぎた。
問題なく接している私達の様子をみてか、結婚の話もトントン拍子で進んでいき、
初めて会ってから半年後には結納を済ませ、結婚式もあっけなく終わり、私達は本当に夫婦となった。
私は大阪に引っ越しをして、大吾くんと2人暮らしが始まる。
夜、並んでご飯を一緒に食べていて、
大吾くんが何気なく私の向こう側にあるティッシュを取ろうと私の前から手を伸ばす。
ぐっと顔が近くなって、
私は息ができない。
これが、私の最近の悩みだった。
大吾くんを、好きになってしまったこと。
ドキドキして、苦しくなって、
でも相談できる誰かがいるわけじゃないし…。
それに、大吾くんは別に私のことを好きなわけじゃない。
政略結婚だから、仕方なく私といるだけで。
私が好きだってことばれたら困らせる。
だから、隠すのに必死だった。
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◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (
レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です！！初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました（笑）この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2017年1月18日 12時
