☆199 ページ14
「アホ…ほんまアホ………」
「大丈夫やって」
「傷痕残ったらどうすんねん…」
救急車の中、
横たわる私の隣に座って、ずっと私の手を握っている廉。
こんな状況なのに不謹慎だけど、
もうそれだけで十分で。
「そのときは、廉がもらってくれるやろ？」
「お前なあ………」
「ふふ、冗談やって。ただ、…うん、いつも守られてばっかやったから、初めて廉のこと守れてよかったかな」
「なにがよかったじゃ！女が守られんのは当たり前やろうが！アホ、アホやアホや思うてたけどアホ！！！ドアホか！！！！！」
「すいませんここ救急車なんで、静かにお願いします」
救急隊員の人に注意されて、口を噤む廉。
ぎゅっと強くなる手の力。
「ごめんね、廉」
「……」
「素直に帰っといたらよかった」
「ほんまやで」
「せやけど、あんまりにも廉が冷たいから、ムキになって」
「はあ………。」
「ごめんて」
「いや、謝るんは俺のほうや」
「なんで」
「守れてないねん。守ってるつもりで、結局俺が傷つけてるやん。いつもそうやん。」
「そんなことないて」
「ほんまに…ごめん………」
「廉、」
「それから、もうこんなことせんといて、心臓止まる、マジでAになんかあったら…」
「……うん」
繋いだ手を、私からもぎゅっと握ると、
すぐに握り返してくれる。
それがすごく、あたたかくて。
心地よくて。
廉だなあ。
この感じ、廉にしかないもん。
それでも、昔とはやっぱり違う。
昔より廉の手が大きい気がする。ゴツゴツしてる気がするし、力も強い気がする。
でも廉なんだよなあ。
ずっとこうしてたい。
そう思ってたら、安心感からか、だんだんウトウトしてきて、意識が遠のいていく。
・
まだ小学校低学年の頃の話。
「廉の手、つめた」
「Aの手が熱いんやろ」
私がよく勝手に走って行ったりして迷子になるから、
家を出たら廉と手を繋ぐのがお約束だった。
「今日から体育縄跳びやて。つまらんくない？」
「A、二重跳びでけへんもんな」
「で、できるわ！」
「はいうそ〜〜」
「む、むかつくー！」
ふん、と駆け出そうとしても、
廉は手を離してくれなくて。
「手！はなして！」
「むり」
「やだ！」
「ふふん」
「廉なんてキライ！」
その言い争いは、学校に着くまで続く。
もちろん、手を繋いだまま。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3243人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (
レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です！！初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました（笑）この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆい☆
| 作成日時：2017年1月18日 12時
