スターダスト・ノスタルジア ４

☆142 ページ8

「俺のせいなんだよねえ…」


ポツリと呟いて、
遠くをぼうっと眺める様子は、どこか他人事で、どこか現実味があって。

なにが。とは聞けるはずもない。
それでも、今帰っていった彼女のことに違いなく。


ずるずる壁に寄りかかったまま、頭をそこにコテンと預けると、私を見て、わらった。


「……へんなかお」


私は、どんな顔をしているのだろうか。

ショウさんは、そんな私を見て、やっぱりわらう。



「……ショウさんこそ、そんな顔…」

「……ん〜?」

「そうやって、誤魔化して…」



返事は無かった。



代わりに、泣きそうな顔が、一瞬だけ。



「ショウさん…」

「あいつ、バカだよね」

「え？」

「俺が、絵描いてるとこ、見たくなかったんだよ、…自分が描けないから」

「……」

「…描けばいいのに………」



さっきのミナミさんの言葉が、ぐるぐる頭を回る。
もういい、って言ってたミナミさんが。


ああやって割り切ったように言ってたけど、
ショウさんからみたら、違うのだろうか。



「バカなのは俺か…」



こんなの、初めてで。

いつもは飄々としているショウさんが、こんなに動揺してて。

弱ってて。



あんなに憧れた、私もこの人みたいに強くなりたいって、思ったショウさんでも、

ああ、誰にだって、
弱さはあるのか、と。


どうしたらいいかわからなくて、
おそるおそる、
壁に預けたままの頭に、そうっと手を伸ばす。

ぽん、と手を当てた瞬間
その手首を掴まれて、気づいたら、

すぐ近くに感じるショウさんの匂い。
触れたところから伝わる体温。



「……いっぷん……」

「………」

「だけ、」

「…はい、」

「ちゃんと数えといて」



ショウさんの腕の中で、息を潜める。

いち、ち、さん、……
言われた通りに心の中で数えてたら、
いきなりショウさんの額が私の肩に乗っかって
思わず、びく！と反応してしまう。

あわわ、どこまで数えたかわかんなくなっちゃた…



「もう2分は経ってそーだけど？」

「え、あ、ですよね！」

「いいの？」

「えっと…じゃあ、終わりで」

「なにそれ」


そう言って離れたショウさんは、
もういつも通りの笑顔。

正直、ホッとした。

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