☆184 ページ49
「ショウさんそっちじゃないです！」
違う方向へ進もうとするショウさんを慌てて呼び止めて、
こっちこっちと指を指す。
「えー？迷路みたいで困っちゃうや〜あはは」
「もう東京駅でみたいに探し回るの、私いやですからね」
「いや東京駅はほんま迷わんほうがむり」
週末。ショウさんと大阪出張。
あんなに泣いたのに、普通に過ごせてるのが自分でも不思議だ。
どんなことがあったって、時は進むしお腹は減るし眠くなる。こんな自分が、少し悲しい。
「でもうまく言ってよかったです」
「色々注文つけてくんのマジ勘弁って思ったけどケーキだしてくれたし」
「ケーキて」
取引先との打ち合わせも難なく終わり、
もう日も暮れてきたので、長妻くん用のお土産早く買って帰ろうと大阪駅をウロウロ。
どの店にしようか悩んでいたところに、
ショウさんが思いついたように私に言う。
「Aの家って、ここから近いの？」
「家…？」
「実家。大阪なんでしょ？」
「…ええまあ………。」
「行こ！」
「は？」
「Aの実家か〜！たのしみやな〜〜」
「いや行きませんよ」
「ほらはやく」
「話聞いてます？それに、田舎なんでここからじゃ遠いですから」
「あ、人ん家行く時ってなんか持ってかないとダメ？おやつ用に買ってた東京バナナまだあるけど…食べさしだし……」
「いや食べさしはアウトです……って、いやだから行きませんって！！！」
上京してから、ほとんど実家には帰っていない。
唯一、成人式のときくらいしか。
といっても寝泊まりしただけで、日中はずっと外出していたし、家にいなかったに等しい。
なんというか、家が嫌なわけじゃないのだ。
ママも、パパも、避けたいんじゃない。
ただ、あの場所が。
廉と過ごしたあの田舎。
それが、帰りたくない理由。
「ほんとにダメです、連絡も入れてないですし」
「ちょーっと行くだけだって、ね？お願い！お願い〜〜」
「ダメです」
やだやだ行こうよ〜と、ショウさんが駄々をこねる。
ええ…こうなると、結局私が折れるのがいつものパターンなのに。
ね？行こ？迷惑かけないから？ね？、と子犬みたいに見つめられて、頭を抱える。
どうしよう…！
「新田？」
ひどく懐かしい声。
横からかけられたそれに、
自然と視線を向ける。
「わあ、やっぱり」
「………西畑？」
きゅるん、という効果音がつきそうなほど可愛い笑顔で笑う西畑が、私の顔を覗き込んだ。
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
