☆179 ページ44
廉だ。
ここに廉がいる。
「ごめん…………っ」
「………廉………」
「…嫌やったら、俺のこと殴ってええから」
思い出すだけで、苦しくなった。
彼の面影が残るものすべて、受け付けなくなった。
はずだったのに。
この匂いに安心するのは何で？
この体温に、
この声に、
嫌だなんて………思えない。
自分からも廉の背中に手をまわしたら、
それが合図みたいにもっと引き寄せられた。
遠慮がちに空いていた距離が、ゼロになる。
「………嫌な、わけ…」
「……」
「探してた…ずっと、よう、やく……みつけたのに……！」
「………A…」
「嘘ついてごめんなさい…！私、ムリやったから……1人なんて、ムリで…………」
「……知ってる、バカやし」
「バ……！何で今そういうこと…！」
「でも、それを知ってて手放した俺が、1番バカ」
ぎゅうぎゅうと抱きついていたのをやめて、
廉の顔を見上げる。
悲しそうで、苦しそうで、嬉しそうで、
優しそうな瞳が、私を見つめていた。
「好きやで。昔から、ずっと。」
ううう…って、か細い、今にも折れそうな声がして何かと思ったら、
自分の口から出てたものだった。
涙がぽろぽろ止まらなくて、
廉の指がそれをすくってく。
「ずっ、と？」
「……ずっと」
「いまも？」
「……………いまも。好きやで。」
あいていた穴が塞がってくみたいだった。
その言葉自体に不思議と驚きは無くて。
小さい頃から、憧れ続けた言葉なのに。
廉が言ってくれたら、どんなに嬉しいだろうって思ってた。
私を見て、私の涙をみて、
きゅうっと細まる目。
もうそれだけで、心が苦しい。
嬉しくて、苦しい。
嬉しいのに、苦しいことなんてあるんだ。
「ずーーっと、大事に大事に、誰かに傷つけられないように、泣かされないように、守ってきたんに」
「……っ、…うう、」
「それを壊したんは、結局、俺自身で」
「………廉…っ…」
「ごめん」
なにがあったの、とか。
沢山きかなきゃいけない大切なことあるんだけど。
それより、今は。
「廉」
「ん」
「廉」
「なあに」
「廉〜」
「あは、なんやって」
「…ただ、返事してほしいだけ」
「……」
「廉がいる……廉…」
「ん。いるよ」
それから飽きるくらい何度も廉の名前を呼んだけど、
彼はその度に返事をしてくれた。
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
