☆177 ページ42
「………」
「………」
「………あれは、」
「……廉？」
「………あれは……。」
するりと、掴んだままだった手がほどかれる。
ずっと廉は、視線を逸らしたまま。
廉。廉。
こっちみてよ。
わたしの、もう一つの心だった。
ずっと、なにするにも一緒だったんだよ、私たち。
その茶色い目が見るものは、私も見えた。
私がきこえるものは、その照れると赤くなる耳もきこえた。
ずっと、ずっと、ずっと、
一緒だと思ってたのに。どうしてこうなっちゃったんだろう。
どうして。
「…………っ、……う、」
「………A？」
息がつまる。
これは。
胸を押さえてうずくまる。
廉に、迷惑かけたくないのに。
過呼吸のことだって、知られたくない。
しかもその原因が、廉だなんて。
なんとかその場を離れようとするけど、
体は少しも動かない。
ひゅうひゅうと喉が鳴って、呼吸ができなくて。
ただ耐える、しか。
おさまるのを、待つしかない。
「きゅ、救急車…！」
「………いらな、……っはあ、は、……」
必死に首をふる。
生理的な涙でぼやける視界の奥、
廉の辛そうな顔がみえる。
ごめんね。
こんな、変なこと見せて。
もうちょっとで、おさまるから。
だから、もう少しだけ待っててよ。
目を固く瞑って耐えてたら、
戸惑いがちに、私の背中を撫でる手。
あ、廉の手だ。
そうして、どのくらいたったのか、
次第に落ち着いてきて
もう大丈夫、と廉に笑ってみせると、離れていく手。
「ごめんね、…なんか突然苦しくなって」
「……」
「背中、さすってくれてありがとね、ほんと何やったんやろ。あは、ほんまごめん」
「……」
「大丈夫やから、ね？」
「……なんで、嘘つくん」
「…嘘なんて、ついてへんよ」
「声。」
「へ」
「嘘つくとき、上擦るの、かわってへんな」
「………何言って、……ほんとに、大丈夫やって…」
冷や汗をかく。
どうしてそんな、勘がいいの。
過呼吸のこと、バレないようにしなきゃ。
「廉、心配してくれてるんやろ？ごめん、やっぱ私、廉に迷惑かけてばっかりや。今も、昔も。」
「……」
「けどね、今はマシになってんやで。1人でも、ちゃんと…いきていける」
どうにか嘘をならべる。
こんなの嘘。
今、私がこうしてられるのはショウさんがいてくれたからで。
私は、昔から何も変わらない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4798人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
