スターダスト・ノスタルジア ４

☆162 ページ27

「おらんくなるんやもん……」

「……」

「ばか」

「……うん」


顔を机にひっつけたまま、目を閉じる。

酔いが回ってきているような気がした。
少しの眠気と、熱くなる目尻。


「いつも誰と飲んでんの、外でこんなんなってないやろな？」

「えー…？ショウさんと飲むくらいだよー…あの人すっごいつよいから安心だし…」

「…あー、この前の、ね。」

「うん。それに今日はとくべつー」


「付き合ってんの？」

「ショウさんと？」

「ん」

「あのひとはー、だいじにしてくれる」

「……」

「初めて会った時からずっと、大事にしてくれる」

「…答えになってへん」

「わからんもん。ショウさん変わってるから。」

「どんな風に」

「廉とは、ちがう」

「なにが」

「ちょっと強引やけど、私を捨てたり、しない…」


必死に目を閉じていたけど、
涙はおちていく。


いま、廉、どんな顔してる？

気になるけど怖くて。



「あは、ごめん頭痛くて」

「…飲みすぎや」

「あーーずきずきする」

「せやから言うたのに。俺もう帰るで」

「ほんまごめん、見送り出来んわ」

「……鍵、あとでちゃんとかけとけよ？」

「うん、わかってるわかってる。」

「お邪魔しました」

「はーい、じゃあね」


ほんとは、ちがう。
この涙はお酒のせいじゃない。

きっと廉も、それに気づいてる。

でも見ないフリなのは何で？
優しさ？
それとも廉が触れられたくないの？


廉、帰っちゃうんだ。

次いつ会えるんだろう。
…また会えるのかな。

なにも、聞きたいこと聞けてないのに。


「あのさ」
玄関のほうから、廉の声。

「消せんかった」

「……ん？」

「ラインのアカウント、Aのだけ消せんくて」


鍵を開ける音。
ドアを開ける音。

廉の声が、遠ざかっていく。



「いまも。」



え？と振り向いた瞬間、ドアが閉まる。

そこに廉はいない。


しん…と静かになった部屋。
今までのことが、すべて夢なんじゃないかと思える。

けれど、目の前の机には、2人分の食事の形跡。



廉、なんでそういうこと言うの？

私、どうしたらいいの？

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