☆157 ページ22
「……」
「……」
沈黙の間に
暑い太陽の日差しが降り注ぐ。
じわり、と全身から汗が滲む。
からからに喉が渇いて
声が出ない。
ドクドクと速まっていく鼓動に、追い詰められていく。
同時に息苦しさを感じて、
また発作かと身構えたけれど
彼の発した一言によってそれは消えた。
「荷物を」
「……ああ、…」
「うわ、結構おも。ばーちゃんこれ持ってきたの？すごいっすね」
なんて、言って、
ふんわり微笑むから。
この間のような、冷たさの欠片も見当たらない。
少しずつ、自分に冷静さが戻る。
それに、特に私に対してもリアクションがあるわけでもなく。
ね？すごいですよね？と私に同意を求める姿は純粋なものにみえた。
……私だと、わかってない…？
じゃあもしかして、この間会ったときも、わかってなかった…？
あのわざとらしい視線といい、気付いてたようにみえたんだけど。
今の彼からは、まるでそれが感じられない。
はじめましての人への対応にしか。
そんな私の混乱を知らない廉は
ぺこりと軽く私に頭を下げると、
お婆さんを背負ったまま歩き出す。
その後ろ姿が、ふらふらと頼りなくて
思わず目で追う。
そりゃそうか、
腕も脚も棒のように細く、ぺらぺらと薄い身体。
…昔から、変わってない。
背だけが伸びて。
自然と足が動いていた。
廉のところまで駆けていき、
その手から荷物と地図を奪う。
びっくりしたような廉の顔が、こちらを向く。
慌てて、地図に視線を落としながら口を開いた。
「私も、手伝います」
「……」
「お婆さん、落とさないでくださいね」
「……はい」
不思議と、発作は収まっていた。
名前を聞いただけで起こっていたのに、それが隣を歩いても何ともないとはどういうことなのだろう。
恐怖は、ある。ほんのすこし。
ただ、廉が私を私と認識していないことや、思いの外優しい面が気持ちを落ち着かせた。
…別に、廉といたいわけじゃない。
廉に対してはやはり拒否反応があるし_____約束を破ったことも、なんとも思ってないわけじゃない。
けれど、今は。
他人でいられるなら今は。
お婆さんを助けるためなら、一緒に行動してもいい。
「本当に悪いねえ」
「いいんすよ暇なんで」
廉が笑う。
あの頃の笑顔と重なって、もう少し大人びたものになる。
……ああ、廉だ……………
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
