弐、 りんご ページ3
「姉……ちゃ ん、どこ?」
『!』
鬼を仕留めそこなったか。それとも迷子の子供が来たのか。
と思い素早く振り返ると、私の予想はどちらも違っていたようだった。
先刻斬った鬼が、身体が崩れていく中、力無く呟いていたのだ。
「姉、ちゃん……おりんご…むいてよ……」
『……お姉さんが居たのね…』
きっと、彼のお姉さんは、弟の為によく林檎を剥いてやっていたのだろう。
死の間際に鬼が、人間だったころのおぼろげな記憶を思い出して、感情を呼び起こすことは、珍しくない。
私は自分の懐から巾着を引っ張りだし、もう首の上しか残っていない鬼の彼の傍にしゃがむ。
「…おりんご………食べたいよう…」
『…ほら。』
言いながら、巾着の紐を緩めて林檎を取り出した。
非常食兼おやつとして、たまたま持ち合わせていたものだった。
もう一度懐に手をやり、小刀を出す。
さっと皮を剥いて小さく切り分け、彼に差し出した。
『おりんごだよ。』
「…………!」
最早、顔の一部しか残っていない彼は大きく目を見開いた後、そっと口を開けた。
林檎の一欠けらを、ぐっと口に押し込んでやる。
しゃり、と音がして、彼が林檎をかじると同時に、
バ サ ッ
彼は塵になって消え失せた。
かじりかけの林檎のかけらが、ころりと地面に転がった。
『………………』
鬼の彼は、消え失せる刹那、私に微笑みかけてきた。
すぅ、と息を吸うと、彼が居たほうから、感謝の“味”がした。
『生まれ変わったら、今度はお姉さんに、林檎剥いてもらうんだよ。』
もう誰にも届かないであろうその言葉を呟き、立ち上がった。
……鬼は、鬼殺隊である以上、斬らなければならない。
けれども、私は信じている。
人と共存し、仲良くできる鬼は、
きっと、現れることを。
「よォよォ、久しいじゃねぇか。屋土様よォ!」
。:+.゜。:+.゜。:+.。:+.゜。:+.゜。:+.゜。:+.。:+.゜。:+.゜。:+.゜。:+.:+.゜。:+.。:+.゜
しょっぱなからシリアス気味ですみませんね…
夢主ちゃんの性格や希望、特性などが設定のページだけじゃ収まらなかったので。
お察しかと思いますが、夢主ちゃんは味覚がかなり優れています。
例えば、その場の空気を吸うだけで、相手の心情を読んだり出来ます。
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あい - 不死川さんの漢字間違っていますわ (2020年9月26日 10時) (レス) id: 317a966a03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木苺の星 | 作成日時:2020年5月25日 22時