47:Spica ページ48
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__あの後、善逸君は私の前に現れなくなった。
ただ、クリスマスの翌日…バイト先に私宛てのプレゼントを渡しに来た人が居たらしい。
"メリークリスマス"
丁寧な字で書かれたカードと、タンポポのドライフラワー。
…善逸君。その彼の具現化みたいなプレゼントに心が傷んだけど、大切な思い出として部屋に飾っている。
「_っ、小芭内」
それから、彼。
実弥君と想いが通じあった次の日の午後、蜜璃ちゃんを通して間接的に小芭内から連絡が来たんだ。
週明け。いつもの待ち合わせの木枯しのベンチで、寒そうに肩を上げて足を組んでいた小芭内と目が合った。
ざあ、と風が揺れ唾を飲み込む。
私を見つけてくれたその剃刀色の瞳は意地悪に笑って。
「お前は俺がついてないと駄目だな」
「……っ、小芭内〜〜ごめ"ん"〜!!」
「やめろくっつくな」
マフラーからはみ出した口端が微かに上がったのを確認するとその2メートルの距離を思い切り飛びついた。
私にくっつかれる小芭内はユーカリの木になっていたけど、何だか満更でもなさそうな顔している。
「小芭内も何だかんだ私の事好きだもんね!」
「………………今更気づいたのか」
「……え、」
「フン、俺だって素直な時くらいある」
一定してコアラの気持ちだった私は慣れない小芭内からのデレ反応に彼を下から凝視する。
小芭内がデレた……。初めての反応に驚いていると、誰かに後ろから両脇に手を差し込まれ、強い力でべりっと小芭内から剥がされた。
「……実弥君!」
「お前はァ…仲直りが嬉しいからって抱き着くな。テメェも許してんじゃねェよ伊黒ォ」
「ならあの状況で叩き落とせるのか?お前は」
「俺の彼女をハエ扱いすんな」
ぶらんぶらんと宙に浮いている。
依然私は実弥君に持ち上げられている状態。
彼は私を幼子か何かだと思っているのかな。
「A。良い子だから俺以外の男に触れんじゃねェ」
「……っ、わかりました」
「俺の前でいちゃつくな」
下の子がいる実弥君は私を甘やかすのが上手だ、と思う。
その頭を撫でられる感覚が存外心地良くて丸めこまれてしまうのが現実。
青筋を立たせる小芭内を前に実弥君は悪びれも無く「悪ィな」と言った。
そして私の手を繋いで、踵を返す。
「此奴借りるわァ」
「勝手にしろ」
実弥君に手を引かれ、慌てて小芭内に手を振る。
久々に交わした小芭内は凄く優しい顔をしていた。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時