45:*Lyra* ページ46
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Aの体が底から冷てェ。化粧して、可愛い服着て…お前、デートじゃ無かったのかよ。
アイツは。今さら何だよ。俺の事振っただろうが。
頭の中で絡み合った幾つもの質問は、どうしようもねぇ程好きな女をこの腕の中に閉じ込めた瞬間どうでも良くなった。
「嘘ついてごめん…! 実弥くんじゃ駄目なんて、嘘だった…! _貴方じゃなきゃ駄目だった…!!」
「……っ、」
「今更会いに来てごめんね…っでもどうしても伝えたくて……私は、実弥君の事が」
甘くて歯が浮くその二文字がAの口から紡がれた時、俺は堪らなくなってこの女を強く掻き抱き顎を持ち上げた。
二度目のキス。この間よりも強く押し付けた唇のせいで、此奴の甘い匂いと鼻から漏れる喘ぎ声が直に脳を刺激して理性を失いそうだ。
「んんっ、ぅ……さね、み…君っ、」
「っ…遅ェんだよ…!! 俺が、どんだけ…」
「ぅ、っ……」
ンな潤んだ瞳で見んな。責めたい訳じゃねェ。
動揺で言いたくもねェ言葉が口に出る。
ちげえ、そんなんが言いたんじゃなくて。
「〜〜あークソ…! お前が好きだァ…!」
「……っ」
歯が浮くなんて感じた二文字を、Aは簡単に俺の口から吐き出させた。
此奴は言わねェと分かんねェから。
言葉と態度でちゃんと示してやらねぇと不安にさせちまう。
「実弥君…私の事、覚えてたの…?」
「…ア?」
「ち、違った…? あ、私勘違いして…!」
「…一体何の話だァ」
頬の涙を親指で拭ってやればぴくんと反応して俯いた。……クソ、可愛いかよ。
…聞けば俺達は中学が被ってただと。中学ン時の思い出は殆ど無ェ。未だに連絡を取ってる連れなんざ0だ。
「…中1の遠足…覚えて、ない?」
「遠足ゥ? …あー。星見に行ったやつかィ」
あん時はグループの女が鬱陶しくて一人行動をした気がする。
特段変わった事なんて無かった。
……けど確か一つだけ、ほぼ皆無の思い出の中脳裏に焼き付いて離れねェ景色がある。
――俺が手繋いでやるから泣くなァ
泣くのを我慢して、暗い、怖いと蹲ってた女子。
何故かあの時、放っとけねェと思った。
柄にも無く、女が嫌いな筈の俺は其奴の手を握って…。
「_まさか、お前……」
久々に思い出した景色を現実に重ねた瞬間、あの時の女子とAの切ない顔が一つになった。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時