42:Tucana ページ43
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「わぁ……ホワイトクリスマスだよ、Aちゃん! 綺麗だねえ」
柔らかな雪がキラキラと星のように音もなく静かに降りつづく。
街行く人が皆空を見上げて感嘆を漏らす声が鈴のようだ。
善逸君もまた、皆と同じ様に輝いた目で落ちてくる光を見つめている中、私の心臓はドクドクと脈打っていた。
「――……星だ…」
「…Aちゃん…?」
その鈴の様な音で落ちる雪が愛しくて仕方なかった。
……銀色に輝くそれは、まるで星が落ちてくる様。
――Aちゃんの本当にかけがえのない人
_堪らなく、実弥君に会いたくなった。
「…………ごめん…善逸君………」
「え?」
「私漸く気づいた……本当に好きな人」
涙を堪えながら善逸君の手を離す。
びくついた善逸君は途端に泣きそうな顔をした。
「だめ…Aちゃん。行かないで。こんな雪で、あいつを思い出さないで」
「ごめん善逸君…ごめんね」
「嫌だ…待ってよ。Aちゃんの望むものなら何でもあげる。大好きなんだ心から…君だけ!」
「……っ私も善逸君が好きだよ」
でも、かけがえのない人はもう既に居たんだ。
クールだけど優しくて格好良くて、私をいつでも見つけてくれる最高のヒーロー。
善逸君への好きなんかじゃ無い…たった1人だけへの、唯一の好きなんだ。
「何度も否定してきた…昔からの約束の方が大事だからって……でも私の周りの人や環境が気づかせてくれた…! 約束なんかよりずっと、実弥君の方が大事なんだって……!!」
「……っ嫌だよAちゃん…!」
「…善逸君に出会えて本当に良かった。本当はどこかでもう二度と私のヒーローに会えないと思ってたから…」
「私の事、幸せにして…」
それは善逸君によってでは無いけれど。
善逸君の綺麗な瞳から決壊した涙が数滴頬に流れ落ちた。
「…っさよなら、善逸君…!最低な女で、ごめん」
ゆっくりと距離を取って、踵を返す。
1人にしてごめん。幸せになれなくて、ごめん。
_「Aちゃん!!」数歩進んだ所で、善逸君が私を呼び止めた。
振り返ると、ぼろぼろに泣きじゃくったいたいけな姿が映る。
「……っ本当の事、教えたげる」
「……え…?」
「俺は君のヒーローなんかじゃない。
君をあの時助けたのは、本当は_」
――善逸君から全てを聞いた時、私は居てもたっても居られなくなって走り出していた。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時