銀髪とスコーン【不死川実弥】

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「お疲れ様です！」

「お疲れ星奈ちゃん、無理しないでよ」

「えっわ…いいんですか？」





アップと同時に店長からホットオレを渡される。
余程負の感情が表に出てたのかな。
何にせよお言葉に甘えて柔らかな匂いのするドリンクを片手に休憩室へ向かった。


＿＿ブーブーッ





「あっ！？ 電話、」





休憩室に入った途端私の携帯が鳴っている事に気づき慌てて手に取る。

画面には"実弥君"の文字。…出るか迷ったけど、気づけば通話ボタンを押していた。





「っもしもし、」

『…あァ』





どっと心臓が口から溢れ出そうになる。
この声を聞いただけで私一瞬でだめになる。





『今、どこに居る？』

「あ、えっと…バイト、終わったとこ」

『…良かったァ。着替えたら裏口来てくれねェ？』

「え…」





まさか実弥君。

電話を耳につけたまま着替えずに裏口へ走った。
私が近づく度電話口の遠くで足音がしている。


ばん、と勢い良く開けた扉は耳元で同時にした。





「…っ実弥君、！」

「お、まえ…着替えたら、つったろォ」

「だ、だってはやく会いたく、…っあ！」

「…俺に会いたかったんか」





本音が漏れてしまった。
手で口を抑えてももう遅い、しゃがみ込んだ実弥君が目を見開いて私を見上げる。





「……なァ、昼の男…誰？」

「…っ、ぇ、あの男の子は…」

「どういう関係？」

「……友達、だよ」

「じゃあ何で俺から逃げたわけ」

「ち、違うあれは…！」

「何にも違わねェだろ！！」

「っ、」





質問責めしていた実弥君が、聞いたことも無い声で怒鳴った。

初めて、彼が声を荒げたのを聞いた。
今までずっと優しかったのに。





「彼奴に何言われたか知らねェが…怯えてるくせに何で助けを求めねェんだよ！ テメェでテメェを苦しめてんだろォが…お前の顔見たら分かんだよ！
……何で…！ 俺を頼らねェ……！！」

「……っ実弥、く…」

「あんな男にお前を取られてたまっかよォ…！！」





息を荒げた実弥君に強く手を引かれ、勢い良く彼の胸に倒れる。
逞しい腕が私の体に回ってきつく抱きしめられた。


初めて、こんなにも近く、触れた。
和菓子みたいな実弥君の甘い匂いが鼻いっぱいに入り込んでくる。





「…っぅ…っさね、み…君…ぐす、…」

「…ッ」

「ごめ、なさ……っ私、…つき、あえない…ッ」





自分の中の約束を破りたく無い。
私はあの男の子と恋をするって、ずっと決めていたから。





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