銀髪とスコーン【不死川実弥】

31:Lacerta ページ32

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「…今は授業に遅れる。後にしろ」

「待って、LINE教えて！ そうしたらすぐまた会えるでしょ！」

「……っうん、そう…だね。分かった」

「A……！」





ドクドクと血流が手首にまで通っているのを感じる。
どうしてこんなに脈が速くなってるんだろう。

どうして…彼が、あの時の男の子だと思えないの？





「…あれが本当に…お前がずっと待ち望んでいた初恋なのか？」

「…やっと会えたんだ。それに相手も、私を奇跡的に覚えてた…これって……」

「――運命、とでも言うのか。お前はそういうメルヘンチックな類が好きだものな」





小芭内の言葉に若干刺がある。
それは分かってる。彼は人を簡単に信用しない。


我妻君は私に抱きついて来ようとした、それを止めたのは小芭内。第一印象は最悪だろう。

　だけど私にとっては…私の事を覚えてて、待ち望んでくれていたって点で嫌いにはなれない。





「６年間も相手が変わらずにあの時のままだと思っているのか？ そもそもあの男は信用に値しない。昔の記憶を美化して今を見れていない証拠だぞ、あんな男に好意を抱くなんて」

「……っでも確かにあの時…あの男の子が居なかったら、私はあそこで一人で動けなかったんだ…！
私の、ヒーローになったんだよ…！」

「＿＿…"彼奴"と絡んで、漸く過去に囚われなくなったと思ってたんだがな」

「え？」





小芭内を見た時にはもう彼は前を向いていた。
どこか失望したような…寂しそうな声色だった。

1限は必修。…嫌でも経済学部の人達が集まる。





「ッチ、朝から彼奴等と一緒か。嫌気が差す」

「…っ」





後ろの方では女の子達を従えた２人が堂々と君臨していて、宇髄君が私たちに気付いて近くへ座るよう手招きする。


　しかし小芭内は華麗に無視して手頃な場所へどかっと座った。
宇髄君にごめんねとお辞儀し、仕方なく私もその隣に腰を下ろす。





「＿さねみん、これなァにぃ？」

「ピンクって、似合わなー！ 超可愛いじゃん何このイルカ」

「そんなの付けるタイプだったっけー？」





そしてこの席は後ろから矢のように女の子達の声が降ってくる。
その甘ったるい声は昨日のイルカを指しているようで。…実弥君付けてくれたんだ。






「勝手に触んなァ、大事なモンなんだよ」

「……っ」





＿実弥君が私だけに優しいなんて、前から気付いていた。
他の女の子には冷たい、なんて。


――私だって、どうしたらいいか分かんないよ。





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