29:Sagittarius ページ30
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自宅マンション前まで送って貰ったけど、恥ずかしさと困惑で顔を上げられない。
私今絶対変な顔してる…。見られたくない。
「_A」
「っ、」
「ん。こうした方が顔が良く見える」
さらりと横髪を耳にかけられる。
ますます俯いた私の上から、実弥君の優しい笑い声が降ってきた。
「なァA、俺の気持ち分かった?」
「……」
「お前は俺のこと、どう思ってんの?」
こくんと頷いたは良いものの、そんな事を聞かれてうかつに好きや嫌い等と簡単に言えないのが私だ。
だけど実弥君は私の返事をまるでいつまでも待つ様子だったので、辛抱切れた私が小さく声を震わせた。
「……っすこし、だけ……」
「ん?」
「考えさせて…ほしい……」
「…………分かった」
実弥君がぽんと私の頭を優しく一撫でする。
そして彼は「おやすみ」と私に声をかけ、バイクに跨った。
私がマンションに入るまで彼は見送るつもりだ。
良く動かない足で、何とか踵を返せた。
「…おや、すみ……」
実弥君が手を上げて、バイクを発進させる。
たちまち見えなくなってから漸く、私の肺に酸素が流入した。
「……っぷは、!」
――緊張した……!! 一気に寿命縮んだ!!
だって実弥君が……あの、実弥君が告白…って…!
ていうか実弥君はいつから私の事を? まさか本気じゃない? ……でも、キスされたし……。
延々と、入口で立ち尽くして考えても答えは出なかった。
「…でも、私は……あのプラネタリウムの…男の子が…」
引越しした後も暫くあの男の子の事で頭がいっぱいだった。
中学生も高校時代も…ずっとあの男の子と再会できる日を心待ちにして、告白されても断り続けてきた。
今回も、いつもと一緒だ。告白されても、断るだけ。
__なのに何で。私、今。
「すぐに…断れなかったの……」
実弥君は今まで告白してくれた男の子とは違う。
信じられないくらい優しくて器用で可愛くて、でも…格好いい。はじめての感情。
小芭内に関わるなと言われた後も…どうしても拒絶できなかった。したく、なかった。
「……っ分かんないよ…」
実弥君とは付き合えない。私はあの男の子をずっと待ってる。
それなのに何でこんなに悲しいの?
付き合えない事が、何でこんなに…苦しくなるの?
実弥君と出会って、私の中の何かが変わってしまった。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時