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イルカのキーホルダーの値札を切ってもらって実弥君の元へ戻る。
…しかしものの数分で彼を見失って辺りを見渡すと、同じくレジの方から実弥君は戻ってきた。
「実弥君、お待たせ…ってアレ?」
「おー。俺も待たせたなァ。ほれ、交換」
「…っえ、え、」
私の握っていたキーホルダーを取り、代わりに私の手に青のイルカを乗せた実弥君。
お揃いのマスコットを彼は私が並んだ直後に買っていたのだ。
「…これじゃ最後行けなかったお詫びじゃなくなるよ…!」
「詫びなんか要らねェし俺もあげたかったから気にすんなァ」
「でも」
「俺とお揃いはそんなに嫌かィ?」
「ッ違、そんなわけ…!」
「じゃあ大事に取っといてくれ」
……そんな優しい笑顔見せられたら弱いよ。
私のお詫びは無しになってしまった。
外を出るともうすっかり日は落ちていた。
駐車場でヘルメットを被った実弥君がバイクに跨る。
「苦手なモンとかあるかァ?」
「ううん、ない!」
「…んじゃァ近ェし俺のバイト先でもいい?」
「え…勿論! 行きたいです!」
「はは、元気だなァ」
「んじゃ行くぞ」と私にヘルメットを被せてくれる。
今度は言われる前にしっかりと実弥君の腰に手を回してぎゅっと掴んだ。
夜の風は、少し寒い。
「…ごめんなァ、寒かっただろ」
「少しだけだよ、平気! おっきいね」
「自営業だけどな」
「そうなの!? すご…」
実弥君が重そうな扉を開けた先は照明が少なめの落ち着いたバルの様なレストランだった。
こんな所で実弥君バイトしてたんだ…。お洒落……。
「いらっしゃいませ……ん、実弥じゃねェの」
「お疲れっす」
「彼女? こんばんは」
「まだ違ェよ。…A、ここの店長」
「こ、こんばんは…!」
「かんわいいね。実弥良いセンスしてる」
「早よ席案内して下さい」
テクノカットのお洒落な男性が洗練された振る舞いでお辞儀をした。
玄関で少しだけ話してから私達を連れて店長さんは席を案内してくれる。
メニューを渡され、おずおずとそれを受け取る。
「ステーキのお店なんだ!」
「あァ。ステーキとワインが主体だな」
「実弥君はキッチン?」
「いや、ホール。ソムリエしてんだ。ワイン注ぐバイト」
「……か、格好良すぎ……」
「そうでもねェよ」
実弥君がホールであんな制服きて接客してワイン注いでくれるのかぁ…。
……早くお酒飲めるようになりたい。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時