24:Aquarius ページ25
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ずんずんとこちらへ向かってくる実弥君に少し物怖じしながらも男性は「お友達?」なんて声をかけてきた。
私が声を発する前に、実弥君の腕がにゅっと伸びてきて私の肩を抱き寄せる。
「どういう了見でこいつに声かけてんだァ……」
「あ、す、すいませんでした…」
「行くぞA」
「……っえ、」
私を抱き寄せたままゲートへ歩いていく実弥君。
……っていうか、今、Aって…。
Aって……!!!
「ごめんなァこんな仲でもねェのに」
「あ、ち、違……。名前…呼ばれたの、びっくりして…」
「…わり」
「で、でも、嫌ってわけじゃなくて…! なんていうか、その、むずむずした…って、いうか」
今「星奈」なんて元どおりにされると、それはそれで寂しい気がするんだ。
だけど名前で呼んで、なんて大それた事言えない。
「…実弥君の……好きな、ように…呼んでください…」
そう言うのが精一杯だった。
「……じゃァ遠慮なく呼ばせて貰うわァ」
「……うん」
「__A、」
「……っ、あ、やっぱ恥ずかしい、かも…」
肩を抱き寄せながら顔を覗き込んで呼ばれたものだから一気に顔に熱が集まったのが分かる。
変な顔してるだろう私を覗き込んで、実弥君は見たことないくらい可愛い顔で「くは、」と笑った。
どうしよう今の顔めちゃくちゃ好きだ。
「…ん、パス買っといた」
「え、いつの間に! ありがとう、お金…」
「安かったから気にすんな」
「ええ! でも……」
実弥君バイトしてるのかな。でも折角出してくれたんだし今お金の話するのは嫌がられるかな…。
「じゃあ、ご飯は私が出すね!」
「……ア? …飯も、一緒に食えんの?」
「……駄目かな」
「…………駄目じゃねェ。終わったら飯誘おうと思ってた」
「…!」
ふい、といつかの日みたいに顔を逸らされる。
だけど耳はほんのり赤くなっていて、私だけが緊張してるんじゃないんだと思えた。
ゲートを潜った途端薄暗くなる館内。
壮大な大きさの水槽が目の前に広がる。
「わぁ…すごい…!」
「…でっけェー!」
「ね! でっかいねあの魚! あ、見て実弥君!」
「ニモじゃねェか!」
水族館ていうものの魔法はすごい。
平素クールな実弥君からニモなんて言葉を飛び出させる。
普段じゃ考えられないくらいはしゃいでいる実弥君の笑顔が嬉しくて私もつられて綻んだ。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時