18:Taurus ページ19
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「…やっと終わったぁ〜!」
長い授業も終わり、夕日が照らす講義室で思い切り背伸びをする。
朝から凝り極めた身体がコキコキと音を立てて鳴った。
「A。今日はバイト休みだろう。来週甘露寺と約束があるんだが下見に付き合ってほしい」
「えっ勿論! 行く行く!」
「2件回るがいいか?」
「いいよー!」
小芭内からのお誘いもあり意気揚々と立ち上がって彼の隣を歩く。
他愛もない話をしていると私の携帯が震えた。
インスタの通知。実弥君からだ。
「実弥君から。見てもいい?」
「ああ」
今朝の事もあるから、念を押すように小芭内にじっと睨まれたので、しっかり立ち止まって携帯を開く。
"正門で待ってる"
……いや、何で?
「どうした?」
「実弥君が正門で待ってるらしい……」
「は? 何故だ」
「私も知りたいよ…」
とにかく今日は小芭内と遊びに行くって決めたんだ。
無視しよう無視。
これ以上関わると女の子の目が痛い。
「…い、いこ!」
「よくないだろう誠意を見せろ。相手が誰であろうと無視は駄目だ」
「…だけど私…実弥君と、会ったら」
_その時風埃が舞って髪が揺れた。
「星奈ァ」聞き慣れてしまった声が私を呼んだ気がして辺りを見回す。
ここに居ないはずの実弥君が、壁に肘をついて肩で息をしながら私を睨んでいた。
「さ、ねみ君…。なんでここに」
「正門で待ってたけど、お前が見えたから」
「…そっ、か……」
「DM見てねェよなァ? 勝手に待って悪ィなァ」
見ましたけど…! 無視したなんて言えない…!!
般若みたいな顔した実弥君が近づいて来て思わず強張る体。
だけど信じられないくらい優しい手つきでそっと手を握られ、緊張が解けたみたいに力が抜けた。
「伊黒ォ、悪ィが星奈借りていいか?」
「何故俺に許可を取る必要がある。まず本人に聞くんだな」
「…一緒に帰んねェ? ……駄目かィ?」
きゅ、と握る力が強くなる。
そんな目で、言わないで……。
駄目だよ、だって小芭内と約束があるんだもん。
小芭内、何か言ってよ…!
「ごめん……」
「……」
「小芭内、…やっぱり別日でもいい…?」
「…………気にするな」
実弥君の目が輝き小芭内は表情一つ変えず頷いた。
ずきんと胸が痛む。ごめん、小芭内。
でも私実弥君に見つめられると、断れないんだ。
「…行くぞォ」
「ばいばい、小芭内」
「……あぁ」
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時