ᴅᴇʟᴜsɪᴏɴ (ページ5)

今日:185 hit、昨日:269 hit、合計:17,005 hit

Longicalycinus ' n.syn ページ5

You said

小さい時の記憶なんて成長するたびに消えてってしまうのが普通だ。自分が今持っている一番古い記憶は小1の時に行った秋の校外学習で、

「ねえ、この花ってなぁに？」
【これはね、撫子っていうんだよ】
「ピンクいっぱいでかわいいね！」
【撫子はね、小さい花がいっぱい咲くから
　子供に例えられてるんだよ～】

って先生に教えられてる記憶。

＿＿＿

その時から花が好きで、今もフラワーアレジメントの仕事につけていることはとても幸運なことだと思うし、最近はネットでの依頼も増えてきて業績も右肩上がりで嬉しいことばかり。
秋近くなのでハロウィンの依頼や、十五夜に向けてのリース、早めのクリスマスの予約などもありいろんな花と関わる機会が多くて楽しい季節だ。

『すいませーん…』
「はい！お伺いしま、って中村くん？」
『なんで俺の名前！？ってAさん…？』
「って、名前覚えてもらえてたんだ？」
『まぁ、同じクラスやったしなぁ』
「確かにそうだね笑」
「コーヒー淹れるからこのテーブルどうぞ」

店舗に人が来たと思えば、高校生の時の同級生。大人になってからは全然出会えてなかったから思い出話に花が咲いてしまう。

『で、本題なんやけど』
「そうだよね？ごめん、ごめん！」
『ナデシコを使ってアレンジメントを作ってほしくて』
「ナデシコ？ってピンク色が特徴の思ってる花であってる？」

ナデシコは確かに秋の花ではあるが、アレンジメントに使うには花が小さすぎてそれだけではインパクトがない。しかも背の高い中村くんが持つとなればなおさら。

『色味なんやけどナデシコの色メインでいけたりする？』
「うーん、大丈夫なんだけど
　ナデシコだけってなると派手さはなくなっちゃうかな…」
『今回は家に置くぐらいのサイズで別に派手さ求めてへんねん！難しいかもせんけどナデシコだけで作って欲しいんやけど…』
「予算とお渡し時期の予定はいつぐらい？」
『予算は相場がわかれへんけど5000円ぐらい予定してて、時期は早めやと嬉しいんやけど』
「了解、ナデシコが店舗に届いたらすぐに作り始めるから…」
「早かったら二週間ぐらいかな。」
『めっちゃ助かるわ！ほんまにありがとう！』

『じゃあ、連絡待ってるわ！急に押し掛けたのにありがとう！』
「こちらこそ依頼ありがとう。納得いくもの作れるように頑張るね！」

こちらを向き直って目を合わせて挨拶、手を振ってくれる彼を見て、あの頃と変わらないなぁって感じた。

→