検索窓
今日:13 hit、昨日:65 hit、合計:58,505 hit

10 ページ10

男の話し方が要点をついているというよりも、自分の身に降りかかっていることだと受け止めきれていないからかもしれない。
まるでどこか遠い世界の出来事のように感じる。

実際はAが腰掛けるソファの後ろに、Aのものだというスタンドが浮かんでいるのだが。改めて振り返る勇気はなかった。


男の話を引き継ぐ形で、今度は同級生が口を開いた。

Aがスタンドを使って悪さを企んでいるか、もしくはその被害者だと踏んで戦闘になり、気絶してしまったAを家へ運んだのだと。ここは彼の自宅らしい。


そのときのことを思い出そうとすると、背筋に寒気が走った。
下顎が震えるのを堪えていると、その代わりだとでもいうように、背後のスタンドがかちかちと爪を鳴らす。


「少し話を戻すが。さっきも言った通り、スタンド使いになるきっかけはいくつかのパターンに分かれる。その様子だと、生まれつきではないんだろう。何か心当たりは?」
「……あ、っ…!」


また針のスタンドがAを襲おうとする気配がしたが、瞬時に現れた男のスタンドがそうはさせなかった。

すぐ後ろで起こっていることよりもAの意識を捉えて離さないのは、蘇った記憶の断片だった。


「2週間くらい前、バス停で……雷の怪物が、私を、弓矢で…」


久しぶりの大雨だった。
屋根の下にいたのはAだけ。
ばちん、と音を立てて切れた電球に、最初は遠くで雷でも落ちたのかと思った。

けれど次の瞬間には視界を焼き切るほどの電気が迸っていて、電流に混じって高笑いが聞こえた。
そして、雷の化身は取り出した弓と矢で、Aを……。


体ががたがたと震え出した。まるで悪夢だ。
このときまで都合よく忘れていたのに、何故今になって鮮明に思い出してしまったのだろう。


「…仗助。電話で言った伝えたいことなんだがな。音石明がネズミの数を誤魔化していたのが気になって徹底的に吐かせてみたら、野郎、人間も一人射抜いてやがったぜ。今朝スピードワゴン財団から連絡があったところだ」
「じゃあ、こいつが…」
「そうなるな。やれやれ、探す手間が省けたとでもいうべきか」


男がAの後ろへ顔を向ける。

針のスタンドは、だんだんと強い力でもがき始めている。

11→←9



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (72 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
161人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。