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住宅街に差し掛かる頃には、彼女のスタンドは堂々と姿を見せていた。
おかげで、その全貌がしっかりと見て取れる。
全体的に細く華奢な体躯なのは、本体に抱きつく腕からも明らかだ。その分、両肩から張り出した尖った歯車のような突起がよく目立つ。
両手の爪も同じく鋭利で、一言で例えるなら針のようなスタンドだった。
目と鼻の先にいるスタンドに、億泰は今にも痺れを切らしそうだ。康一はそれをハラハラと見ている。
仗助はぴたりと足を止めた。
2人に下がっているように態度で告げて、釣られて足を止めたAへ体を向ける。
「あのよォ〜。ちこ〜〜っとお話、いいっスか?」
スタンドがだんだんとはっきり姿を現わすのに気付けたのなら、感じ取れることはもう一つある。
体の突起と同じように鋭いスタンドの目線は、常に周囲のスタンド使いを睨んでいた。
分析しようとしているのに勘付いたのか、とりわけ仗助に対しては刺すような視線を向けている。
少しでも爪先が近付いたとき、仗助の視線が彼女の頬を掠めたとき、まるで牽制するかのようにスタンドはその姿を濃くしていたのだ。
スタンド使いを知らない、という線は消え失せた。
スタンドでは徹底的に睨みつけておいて、本体は全くの知らんぷりだなんて、宣戦布告以外の何がある。
「もうやめにしねーっスか?お互いに疲れるだけでしょ、こんな茶番」
「え、っと…?」
威圧的に言葉を投げれば、Aは困ったように眉を下げた。明確に低く苛立ちを帯びていく声の意味を分からないはずもないのに、まだしらを切るつもりなのか。
「いい加減、教えてくれてもいいんじゃあねェの。あんたがそのスタンドで、何をしようとしてるのか」
「東方、くん?私、何のことだか…」
「しらばっくれるつもりならよォ〜、実力行使ってこともできるんだぜ!」
きらりと視界の隅で光が弾けて、仗助の分身が姿を見せる。瞬間、本体に張り付いてばかりだった彼女のスタンドが初めて動きを見せた。
「なッ!?」
「嘘だろォ!?」
「何だって彼女、自分を攻撃してるんだ!?」
その手をぐわりと開いたかと思えば、Aの首元に爪を深く突き刺したのだ。柔らかな皮膚に鋭い切っ先が食い込んでいく。
それでも彼女の様子は変わらない。いや、穏やかさを感じさせる瞳の光が、さらにぼやけたように見える。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時