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すると、真ん中で話を聞いていたAが神妙な顔つきになった。


「…ねえ仗助くん。もしかしてジョースターさんって、あのジョセフ・ジョースターさん…?」
「どの?」
「アメリカの不動産王に、そんな名前の人がいたような…」
「わしのことじゃな〜」
「!?」


危うく大きな声を出すところだったAが、目をまん丸にして口元を押さえた。
微かに「お母さんに内緒にしなきゃ」と言うのが聞こえる。彼女の母親は記者だったか。
娘の知り合いにそんな大物がいると知ったら、確かに騒ぎになりそうだ。


口がちゃんと隠れていたことで、遅れて透明化が治っていることに気付く。

「じじい、赤ん坊は見えるようになったかよ」と聞けばこちらも肯定が返ってくる。
ジョセフを先導する形で、仗助とAも立ち上がった。

仗助は念のためホテルに戻るつもりだったので、せめて最寄りのバス停までAを送っていくことにする。

ジョセフが赤ん坊をあやすのに集中しているのを確認してから、Aの方へ身を屈める。


「なんか悪ィな。毎度じじいの相手してもらってるような気がするぜ」
「気にしないで、私も楽しいから」


見下ろしたAの顔は、お世辞を言っているようには見えない。

一呼吸置いてから、仗助はもう一度口を開いた。思ったより囁き声に近付いた言葉が、呟きのように2人の間に落ちる。


「…じゃあ、また声かけてもいいか?」


いや、その、またこんなことがあったら、誘ってみんのも楽しそうだなァ〜なんて。

そんな言い訳のような言葉の並びが口を突く前に、Aは嬉しそうに頷いてくれた。


自分でも納得いかないが、Aがジョセフにばかり注目しているようだったのがつまらなく感じたのだ。彼女を間に座らせたのは、仗助自身だというのに。


だからリベンジではないけれど、もう一度くらいこうして学外でゆっくり過ごす時間があってもいいのにと思った。


じじいも楽しんでいるようだし、という押しの一言は使わないで済んだ。


なんとなく、声をかける理由がジョセフだとは、彼女に思ってほしくなかった。

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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時

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