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「そういえば一つ聞きたかったんだが、何故君は表通りではなくこの道を歩いていたんだい。大抵の場所には遠回りになるだろう」
「向こうは人が多いですから。静かなこっちの方が好きなんです」
「いい感性をしているな。僕もこの町の豊かな自然と静かさは気に入っているんだ。…ところで、僕はさっき君が見ている前でスケッチをしたわけだが。『見せてほしい』とは聞かないのかい?」
「…お仕事の道具ですし」
「せっかく僕が親切にも、転んだ君に声をかけて素性を明かしてやったっていうのに。君は僕の仕事について、興味のかけらも抱かないのか」
「……聞いてよかったんですか?」
「そうかそうか、君がそう言うなら」


Aはようやく「この人は変だ」と認識した。
しかし芸術家とは多少なれど変わっているものだとも思っていたので、素直に広げられたスケッチブックに視線を向けた。


そこには、ここから見た景色と一緒に、情けない体勢で座り込むAがそっくり描き取られていた。


「……見たね?僕の絵を」


画用紙から顔を上げると、露伴の唇が弧を描いていた。
鼠を見つけた猫のように、目がらんらんと光っている。

Aが腰を浮かせたのと彼が動いたのは、ほぼ同時だった。


「君の記憶、読ませてもらうぞ!『ヘブンズ・ドアー』!!」


Aにはスケッチブックの絵が突然動き出したように見えた。
眼前で光が弾けて、激しい目眩に襲われる。

咄嗟に身を引こうとしていたせいでベンチから落ちてしまったのだろう。
手や足が舗装された地面とぶつかった。


「何故本にならない…!?そうか貴様、スタンド使いだな!」


驚きと共に飛び出した単語に、不明瞭だった意識が現実に引き戻される。

指先まで走る、びりびりとした感覚。
もしやと首に手を伸ばせば、肌に刺さる鋭い爪に触れた。

頭上を見れば、全身を現したレイヴィング・ナイトが露伴を睨みつけていた。


「見えるんですね、私のスタンドが…!」
「ああそうさ。僕もスタンド使いだからね。しかし妙だ。どうしてヘブンズ・ドアーが弾かれた?僕と波長が合わないはずはない。確かに君は見たんだ。まさか、君のスタンド能力か?」


Aの頭に、承太郎の言葉が蘇った。

レイヴィング・ナイトは、針で眠らせる能力を持つ。それは睡眠に限らず、人の五感や感覚を操ることも可能であると。

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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時

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