【ジョジョ4部】蠱惑的インクルージョン (ページ2)

今日:3 hit、昨日:45 hit、合計:58,777 hit

◇2◇ ページ2

チャイムがいかにも学校らしい音を響かせ、校舎中の時計が昼休みを告げる。

あくびをしながら現代国語の教科書を閉じた仗助は、くるりと後ろの席の友人を振り返った。

「大きなあくびだなぁ。さっきの授業、まさか寝てたんじゃあないよね？」
「あの授業で眠くなんねー奴がいるかよ。そういうおめーは随分立派な板書取ってんじゃあねーか、康一」
「あ、はは…。必死に起きてた結果だよ…」

ところどころミミズに化けている文字を指して言うと、康一は苦笑いしながらノートを閉じた。
かく言う仗助のノートも似たり寄ったりである。

行くか、と示し合わせて、2人はそれぞれの昼食を手に立ち上がった。

仗助の親しい友人には、出席番号一つ違いの広瀬康一ともう一人、虹村億泰がいる。

クラス違いの彼はよく昼食がてら仗助達のクラスを訪ねてくるのだが、今朝「4限目の英語でよォ、この前の小テストの解き直しやるっつーんだぜ！？ぜってェしごかれるやつだぜ～～！？」とかなんとかで頭を垂れていたので、今日はこちらから顔を出してやろうというわけだ。

「億泰くん大丈夫かなあ」
「どーだかなァ。俺らの中だと一番やべー点取るからよォ～あの野郎は」

大げさに机に突っ伏す彼を思い浮かべて歩いていると、ポケットに突っ込んでいた右腕が誰かとぶつかった。

「っと、すんませ、……ッ！！」

余所見して歩いていたせいだと、すぐに相手を探す。

体半分で振り返った瞬間、仗助の目におよそ人間らしくない何かの姿が見えた、気がした。

「ごめんなさい、こっちは大丈夫ですから」

そう聞こえたときには、遠ざかっていく女子生徒の背中が見えるばかりだった。
彼女の肩越しに、抱えたノートの山が見える。あれがあるから立ち止まる暇もなかったのだろう。

もっとも、さっきの出来事に気をとられていた仗助に、そんなことを考えている余裕はなかった。

「仗助くん？もう仗助くんったら！どうしたのさ、そんなど真ん中で立ち止まって」

仗助がついて来ていないことに気付いた康一が小走りで戻ってくる。

今の見たか、とは聞かなかった。そんな異変に気付いていたら、人の良い友人はすぐに教えてくれるはずだ。

もう一度廊下の先を見やる。さっきの女子生徒は、どこにも見当たらなかった。